Torenia Fournieri -2-

4 ページ28

.


「…いや、それは結構です。」




『何言ってんの、そんなフラフラで危ないじゃん！俺が代わりに行くから待っててよ。』




いやいやいや･･･




「何言ってんの」はこっちの台詞！




普通に考えてフロントの人に怪しまれるし、まずそこまでしてもらう義理なんてないでしょ？




たまたま部屋が隣ってだけで･･･




赤の他人なのに。




「ちょっ、…と、手！離して下さい…っ、」




『いいからここで待って…』




話しているうちに、朦朧としていたはずの意識がだんだんと覚醒してくる。




それに伴って、限界が近付いてきた。




「ゆっくり歩くから…っ、ご心配なく…」




『いや…そうゆう問題じゃないって、』




あぁもう･･･っ、しつこい！！




「っ、トイレに行きたいの！」




『…へ？』




「先にトイレに行ってからアルコール抜いて、それで フロントに行こうとしてるのに…っ、」




『……。』




「……。」




『あ…えっと、ごめん…』




「……。」




･････最悪。




恥ずかしすぎて死にたい。




何が悲しくて、初対面の、それも男に 「トイレに行きたい」なんて言わなきゃなんないの？




せめて、"お手洗い"って言えばよかった。




どんだけ切羽詰まってんのよ、私･･･




『…俺の部屋のトイレ使う？』




「……。」




『あっ、別にそうゆう意味じゃないよ？！部屋に連れ込むとかじゃなくて、引き留めたお詫びに良ければどうぞってことで……えぇっと…、』




何故か自分で言って自分で赤くなってる彼は、恐らく私を欺こうとはしていない。




善意でそう言ってくれてる、はず。




「……じゃあ、お手洗いだけ…」




遠慮がちにそう言うと、ホッとしたように安堵の表情を浮かべるから 少し申し訳なく思う。




完全に八つ当たりしちゃったなぁ。




きっと、いい子なのに。




ありがた迷惑だなんて思って ごめんね。




『歩ける？肩貸そうか？』




隣の部屋まで数メートルしかないのに、彼は過保護すぎるくらい私を気遣ってくれる。




それこそ、ちょっと鬱陶しいレベルだ。




.




『ねぇ、中でそのまま寝ないでよ？』




「っ、寝ないからドアの前に立たないで！」




女の子のトイレ中にドア前で待つなんて、一体どうゆう神経をしてるんだろうか。




キッ、と睨み付けると、まるで悪いことをして叱られた子供みたいに肩をびくつかせていた。

5→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す