Torenia Fournieri -1-

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A「…ビールにする？」




『え？』




A「あ、それともお茶の方がいい？」




『……。』




A「お風呂上がりだし、喉乾いたでしょ？」




『……うん、じゃあビールで。』




･････なんで？




なんでA、怒んないの？




彼氏がキャバクラに行ってるって分かって、嫌だって思わないの？




自分から仕掛けたとはいえ、激しく後悔した。




自爆したようなもんじゃん、こんなの･･･




じわじわと込み上げてくる涙を必死で抑えるけど、真っ赤になっているであろう目は隠せない。




Aに見られないように、スマホをいじるフリをして俯いた。




A「はい、」




『…ん、』




いつものように俺の隣に腰掛けて、俺よりも先に缶ビールのプルタブを開ける。




『え、Aも？』




「うん、ダメなの？」




『いや…ダメってわけじゃないけどさ、』




Aってお酒得意じゃないでしょ？




普段もそんなに呑まないし、呑むとしてもせいぜい缶チューハイくらいじゃん。




まあまあ辛口のビールをごくごくと喉に流し込むAに、俺は呆気にとられていた。




A「……ねぇ高嗣、」




『ん？』




A「私、今日家に帰るね。」




『……え？』




一瞬、Aがなんて言ったのか理解出来なくてフリーズしてしまう。




A「湯船の栓抜くの忘れないでね。高嗣、お湯使い回さないでしょ？」




『……ちょ、待って待って？！一旦ストップ、頭ん中整理させて！！！』




淡々とそう告げるAに、とりあえず現状がヤバいことにようやく気付く。




Aの家･･･




･････すなわち、ミツの隣の部屋。




いやいやいや、絶っっ対ダメに決まってる！！




何の為に、半ば強引にAを俺んちに来させたと思ってんの。




別れたのに隣の部屋に住んでるなんて、とてもじゃないけど耐えられなかったんだ、俺が。




『……なんで帰んの？』




俺、なんかした････？




･･･いや、したけどもさ！！




怒ってないのに帰るの？




え･･･怒ってないって言ってたよね？




A「…今夜は高嗣と居たくないから。」




俺の目も見ずに、一体どんな顔してるんだろうと思って隣を見やる。




A「……。」




･･･よ、読めない！




どうゆう表情なの、それって･････




限りなく"無"に近いそれは、俺の焦りと不安を煽るばかりだ。

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