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「(紗奈が不安な顔は好きやない…)」
はっと顔を上げる。
いや、別に彼女が好きとかそういうわけではない。ただ不安な顔をされるとこっちが不快になると言うだけで…。
全然彼女にはそういう感情は芽生えてなんかない。
「センラ…?」
紗奈は俺の考えが読めないため、?を頭に浮かべている。
センラの考えが読めず、彼の顔を見つめていると、急に頭がそっぽを向いた。
「こっち見んなや…!」
体が勝手にセンラと反対の方向を向く。
わぁ、これが契約の力なのか…と呑気なことを思っていた。
「(あれ、これなら抜け出した時に警察に捕まっちゃう…。うーん…契約破棄方法も考えておかなきゃ…。)」
紗奈はさっきのセンラの態度はもう頭に入って来なかった。
「ここから出る作戦…考えなきゃね。
…あ、センラ…。こんなのどう?」
紗奈は思いついた考えをセンラに言う。
「ええんやない?
…でも、これは納得いかへんなぁ…
あの__…」
センラの質問に答えつつ、リボンで他の3人に送る。
けれども他にも心配なことがあった。
「(紫姫からの連絡が未だに来ない…。)」
すると、空気を読んだかのように黄色いリボンが返ってくる。
紗奈が望む紫のリボンでは無かったが。
「紫姫から…!…良かった」
そこには紫姫からのメッセージが書いてあった。
紫のリボンはアジトに送っているらしい。
隣にいたセンラが紗奈の手からリボンを取り自分の顔の前に近づけた。
「…まーしぃの血の香りやない…。
いや…少しは…」
[血]、そう聞いて、体がこわばるのを感じた。
「センラ…?どういうこと?」
「こんな小さなものに、血の匂いがつくなんて事は…吸血以外の理由で血を大量に流している…。そして、まーしぃの血の匂いは少ない…。やから…紫姫か、他の誰かが血を流してるってことになるんよ。」
顔つきが真剣で、冗談を言っているようには見えなかった。
「でも、きっと大丈夫…だよね。
リボンを送れるくらいの魔力があるんだから…。
もしかしたら…紫姫ではないかも…」
内心すごく焦っていた。
仲間を失うのは怖い。
全身が小刻みに震えていた。
背中に重みを感じ、温かいのを感じた。
すぐにセンラが後ろから抱きしめてくれていることが分かった。
離れようとしたらできたはずなのに。離れなかった。離してほしくなかった。
「よしよし…大丈夫やで…」
体が芯から温まる気がした。
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作者名:朧月 天音 | 作成日時:2020年12月8日 21時