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「 ─── …と言う訳で、俺にしない?
可愛いたんぽぽちゃん」
「イヤ!
来美はお兄さんよりダーリンがいいの!」
それはあまりにも早い終了だった。
放課後、正門前には今朝会った良太君と来美ちゃんが立っていた。
どうやら、来美ちゃんも今日朔間先輩とデートの約束をしていたようで、朔間先輩もそれに快諾していたらしい。
恐らく、朝日にやられて寝惚けていただけだろう。
私は早急にメッセージアプリで羽風先輩へ応援を頼んだ。
普段はレッスンの呼び出しをしても無反応な羽風先輩は数分で駆け付け、『任せてよ』と来美ちゃんの元へ歩み寄る。
一体、何をするつもりなんだろうと遠巻きで眺めていると来美ちゃんに向けて、連々といつもよりは少しだけマイルドな口説き文句を述べ始めた。
小学生を口説く男子高校生。
端から見れば、異様な光景だ。
しかしマセてるとは云え、まだ小学生の来美ちゃんには羽風先輩の色気は通用しなかったらしく、彼女はハッキリと大きな声で羽風先輩を振った。
羽風先輩は『うん。そっか、そっか。一途なんだねー』と言った後、ニコニコしながら此方へ戻って来た。
「Aちゃん、俺さ、頑張ったよね?」
「は、羽風先輩……」
顔が近い。
それは今にもキスされそうな位の距離だ。
しかし、彼の顔は直ぐに私から離れる。
「この際ちゅ〜はいいからさ。
よしよししてくれると嬉しいかも〜。
よしよしして〜!」
「羽風先輩……っ!」
私達の力不足で羽風先輩の何かを傷付けてしまった。
ワッと顔を覆う羽風先輩の頭を望み通りよしよし撫でながら『お疲れ様です!』と労いの言葉を掛ける。
流石に抱き付かれそうになった時は後ろに待機して貰っていた乙狩にサッと羽風先輩を預け、事なきを得た。
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作者名:ナナシ | 作成日時:2018年4月7日 12時