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「今日の嬢ちゃんは随分と弱気じゃのう。
何か怖い夢でも見たのかや?」

「……はい」


朔間先輩の問いに私はコクッと頷く。

全て怖い夢であり、全て現実だった。

あれから彼は私の前に現れなくなった。
正確には私と揉み合いになっていた所を目撃した人が居り、警察を通して彼には何らかの処分が下されたらしいと病室で見舞いに来た両親が話していた。
何故もっと早く話してくれなかったんだと家族全員に叱られたが、同時に気付いてやれなくてごめんと謝られた。
それから暫く入院生活を満喫していた私に可愛い妹が『お姉ちゃんこの学校に行ってみない?』と一冊のパンフレットを手渡した。

それが夢ノ咲学院だった。

私は妹が普通科を勧めてくれているのだと思っていたが、話を聞いている内に新年度から新設されるプロデュース科のテスターとして転校を勧めているのだと解り、初めは断っていた。
何より男子しか居ないアイドル科と同じ校舎と云うのが少しだけ怖かった。
一体、妹はどういうつもりで勧めたんだと怒りすら覚えたが、妹は忙しい合間を縫っては『お姉ちゃんに向いてると思うから』と何度も病室を訪ねて来た。
その執着ぶりに私は妹に何故だと問う。
すると妹は笑いながら、


″だって、お姉ちゃんのお陰で私達は『今の』私達になれたんだよ″


と答えた。
それがどういう意味なのかは未だに解らない。
しかし、その言葉は私の中にストンと落ち、私はプロデュース科の生徒として転校する事に同意した。

そして、此処が今の私の居場所だ。


「安心するが良い……愛し子よ…
今宵からお主が悪夢に魘される事は無くなる」

「はい……もう、大丈夫です」


そう言って、もう一度私は朔間先輩の言葉に頷いた。


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作者名:ナナシ | 作成日時:2018年4月7日 12時

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