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あんずの言葉に私は目を丸くした。
悟られないようにしていたが、そんなに私は第三者から見ても解りやすい態度を取っていたのだろうか。
「本当は口止めされてたんだけど、Aを保健室へ運んだの朔間先輩だよ」
「……え?」
手に持っていたスポーツドリンクのボトルを思わずグシャッと強く握る。
この陽射しが強い日中は基本寝惚けている朔間先輩が倒れた人間をしっかり運べる程、意識がハッキリしているのは珍しい。
「私、重いとか言われてなかった……?」
「いや、それはちょっと聞いてないけど……
『嬢ちゃんの為にこの事は内緒にしておくれ』って言われたよ」
私の為にって何?
メキッと音を立てて少し凹んだスポーツドリンクのボトルにあんずはヒッと小さく悲鳴を上げた。
元はと言えば、妙な避け方をしていた私が悪い。
それなのに朔間先輩はまるで自分に原因があるかのようにあんずに告げた。
朔間先輩が後輩に優しいのは知っている。
しかし、今はその優しさに腹が立つ。
「あんず」
「な、なに?」
「ちょっと行ってくる」
それは何をしに?
そう言いたげな瞳で此方を見つめるあんずに私はニッコリと笑った。
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作者名:ナナシ | 作成日時:2018年4月7日 12時