期待 ページ39
朝起きて、仕事に行って。
定時で帰ればジュンさんの分の夕飯をいつもより早めに作る。
JN「Aちゃん、どこか行くの？」
いつもより早く出来上がった夕飯を眺めながら尋ねてくるジュンさんを横目に、荷物をあのアパートから持って帰るための大きめのバッグを用意していた手が止まる。
言うべきなのだろうか。
ジュンさんのことだから、きっと酷く心配してしまうだろう。
「ああ、ちょっと友達に会いに行くんです。すいません、事前に言っておけば良かったですね。」
JN「あ〜、そういうことか。
いや、全然いいよ！楽しんでね〜。」
ごめんなさい、ジュンさん。
でもこうでもしないと、あなたはきっと心配して「俺も行く！」なんて言い出すでしょう？
そんな事したら、あなたにもっと迷惑がかかっちゃう。
JN「じゃあ、夕飯美味しく食べるね。行ってらっしゃい〜」
「はい、行ってきます！」
なんだか騙してるような気分になって心が痛むけれど、これは私の問題だから仕方のないことだよね。
・
「…着いちゃった」
今の時間は午後6時半。
秋だから、もう夕日も沈みかけてる。
ピンポーン
チャイムを鳴らすとすぐに開いた玄関。
【…来てくれたんだ】
そこまでたくさんの時間がたっている訳では無いのに、やけに懐かしく感じる顔。
「…部屋に入れてくれる？早く荷物取りたいから。」
舐められないように尖った態度でいなくちゃ、この部屋にはいられない。
最後の最後に忘れたいような思い出が出来てしまった場所だから。
部屋に入ると、少しだけ散らかったリビング。
脱ぎっぱなしの靴下、洗わず出したままのコップ。
ああ、こんなのも私が全部溜息をつきながら直してたっけ。
私の服や私物を全て持ってきたバックの中に入れる。
ふと目に映った私のお金で買ったドライヤーも、浮気相手が使ったと思うと虫唾が走る。
全ての私物をバックに入れてリビングに戻ると、椅子に座っていたテウォン。
「…で？話って何？早く行きたいから短めにね」
そう言えば少し下がった眉をしたテウォンは口を開く。
【…A、本当にごめん。謝って済むとは思わないけど、俺の本心は伝えたい。】
「…」
向き合って話すとよく見えるテウォンの表情に、また懐かしさが込み上げてきて、心が揺らぐ。
【もうあいつとは縁を切ったんだ。俺が本当に好きなのはAだけだから】
あぁ、私はどうしてこんなにも決心が弱いんだろうか。
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作者名：なじゅん^._.^ | 作成日時：2023年3月17日 15時
