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「…」
あぁ、ガツンと言えない自分に嫌気がさす。
もし私が許してしまえば、全ていい方向に行くのだろうか
【俺と、やり直してくれない?】
私に勇気があれば、この肩に置かれた手を振り払うことが出来るのに。
返事も聞いていないのに、どんどん近くなる距離
やがて触れ合った唇。
忘れかけていたテウォンの体温、感触。
本当のヒロインならここで、涙を流して「もう離さないで」なんて言うのだろうか。
キスをされているのに、何故か満たされない。
やけに冷静な自分がいる。
この雰囲気に合わせられない自分が。
あぁ、相変わらず雑なキス。
この唇を押し付けるだけのキス。
「ん、」
なんだろう。
何故だか、しっくり来ないや
・
すぐに脱がそうとするところも、全く変わってないね。
【…っ、なに、?】
服に手をかけようとしたテウォンの手を掴んで振り払うと、動揺したような様子で私を見上げる。
「勘違いしないで、私は別にあんたと復縁して仲良しこよししようとしに来た訳じゃない。」
さっきのキスで全部わかった。
あなたは私を好きじゃない。
そして、私を本当に必要としてない。
そう、それはきっと今まであった存在が無くなるのが怖いから。
なにか物足りなく感じてしまうから。
でも、もう私たちここまでにしよう。
「もう連絡はしてこないでね、連絡先も消して。」
【ちょっ、Aっ!待てよ、】
やけにしつこいテウォンを振りほどいて見慣れた玄関にも別れを告げる。
【おいっ、待てって!!】
手を掴まれて涙目のテウォンに見つめられる。
は…?なんであんたが泣いてんの、?
湧き上がってくるどうしようもない怒り。
自分に感じる虚しさから流れようとする涙まで。
あなたのせいで私の感情がグチャグチャになる。
「なんで、そっちが泣くわけ?」
ほら、そのとぼけたような顔。
自分は悪くないとでもいうような目。
そんな態度が大っ嫌いなの
「私にはもうあなたは必要じゃないし、好きでもなんでもない。
早く手、離してよ。」
睨みをきかせると案外あっさり離れた手。
「…もう、ここに来ることもないから。テウォンも早くいい人見つけなよ。」
そう言い放ってドアノブに手をかけた時。
【…ふっ、何がいい人見つけなだよ。
ああ、わかったよ。少なくともお前みたいに地味で女っ気のない下品なやつは選ばないようにするよ】
…はぁ、出会った時からこんなに腐った男だったのだろうか。
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作者名:なじゅん^._.^ | 作成日時:2023年3月17日 15時