*黒尾鉄朗の愛情表現*

愛情表現 19 ページ20

*




「お、送ってくれて、ありがとう」

「……おー」



私の自宅前に着きようやく破られた沈黙。



ぺこりと頭を下げると、

思っていたよりも普通に返事をしてくれた彼に少し安心した。




「じゃあ、また明日」

「……なあ」

「？」




別れを告げて家の中に入ろうと思ったその瞬間、
突然彼に呼び止められて。


振り返ってみれば、珍しく少し頬を赤く染めた黒尾くん。



「さっきのもう一回」

「……はい？」

「だからさっきの」



さっきの、といえば。

……あれしか思い当たらない。



「絶対嫌だ！」

「えー、なんでだよ」



恥ずかしいからに決まってるでしょ!!



キッパリと断った私に、彼は口を尖らせて不満そうにした。



が、しばらくすると「しかたねーな」と呟いて




「好きだ」

「……はっ!?」




唐突に真顔でこんなことを言ってきたのだ。




「大好き、超好き、愛してる」

「えっちょっ待って」



状況を理解しきれていない私に降りかかってくる
こっぱずかしい言葉の数々。


止まることなく言ってくるものだから、
私は思わず途中で耳を塞いでしまった。



「ま、待って！

な、なんでいきなりそんなこと言うの!?」

「好きだから」



ためらいなくそう答える彼に、ガクッと肩の力がぬける。


……駄目だ、やっぱり言葉じゃ勝てない。




「恥ずかしがってないでちゃんと聞けよ」

「うぇっ!?」




いともたやすく、耳を塞いでいた私の両手を握ってしまう黒尾くん。

完全に油断してた。

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