第三十一話【黒姫】 ページ28
【環side】
(時間としては、二十三話の後となっています)
「ええと、G室、G室はどこでしょう?」
袴の裾をはためかせ、小柄な少女はG室を探し歩いていた。真新しい靴や鞄を持つこの少女、先の入学式でこの天空魔法学院の一員となった新入生である。誇らしげに歩くその姿には、まだ少々のあどけなさが残っていた。
さて、何故1年生の彼女が迷わずG室へ向かうのか?まだ何も知らぬ彼女らならば、普通、生徒会会長などの重役の試合を見に行くものだろう。ミーハーと言えば聞こえは悪いが。
「…見つけましたわ!」
少女は歓喜の声をあげ、軽い足取りで観客席へ急いだ。しかし彼女は何を思ったか、扉にかけた手をそのままに、ふと、後ろを振り向いた。ぞろぞろと沢山の女子生徒がG室に歩を進めている。
何か騒がしいと思ったら…先輩でしょうか?大方、ここで行われる【酒見愉衣 VS 色鳥 鮮】の試合を見に来たのでしょう。
またお兄様かしら、彼女は思った。
もう察しのついた人もいるかもしれない。そう、この少女、華桜院 環は色鳥 鮮の身内である。とは言っても、本当の兄ではなく、従兄妹なのだが。
そして環は、鮮に憧れを抱いていた。自身は隠せていると思っているが、周囲の目にはそう映らないらしい。
「…おっと、こんなことをしている暇はありませんわ。早くいい席をとって、鮮くんを近くで見なくてはいけませんものね!」
環の大きすぎる独り言は、集まってきた女生徒たちの眉間に皺を寄せる原因となった。何故今日初めて鮮くんを見たはずなのに?といったものである。しかし幸せなことに、環はその疑いの視線に気がつく由もなく、放置されていた右手に再度力を込めた。
開いた扉の先には、もう半分ほど席が埋まっていた。運良く空いている最前列の席を見つけ、歩き出す。
それにしても、彼女は思った。さすが鮮くんですわ。ギャラリーの八割が女性です。この分だと、相手の酒見愉衣とやらにもプレッシャーをあたえられそうですね。
「ああ、早く鮮兄様の戦いぶりを見せていただきたいですわ!」
環のランランと輝く目に、距離を取った生徒が、いたとかいなかったとか…
,
8人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ブラックアイ - 更新しました (2018年10月23日 18時) (レス) id: b64c02d5d7 (このIDを非表示/違反報告)
ブラックアイ - 更新します (2018年10月23日 17時) (レス) id: b64c02d5d7 (このIDを非表示/違反報告)
閑(プロフ) - 更新します!! (2018年10月23日 16時) (レス) id: 2baf58587d (このIDを非表示/違反報告)
よもぎまんじゅう(プロフ) - 更新しました (2018年10月22日 20時) (レス) id: 1b69b5d6d8 (このIDを非表示/違反報告)
よもぎまんじゅう(プロフ) - 更新します (2018年10月22日 19時) (レス) id: 1b69b5d6d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪白 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2018年10月14日 21時