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「はい、コーヒー。」
サトシは毎日、日が沈む時間になると俺にもコーヒーを淹れてくれる。
夕日を見ながらコーヒーを飲むのが日課だった。
体が受け付けなくなってからも
俺がいい匂いだねって言ったから
一口も飲めなくったって
必ず俺の前にもお揃いのマグカップに注がれた、サトシ自慢のコーヒーが置かれる。
今日はサトシの誕生日だ。
翔ちゃんも相葉さんも潤くんも。
今日まで待ってくれているのだろう。
二人でこの日を過ごせるように。
でも
二人の世界も今日で終わりだ。
ずっとまともに食べていないサトシを、
このまま放っておくことなんて、出来ない。
あの日以来、ふたりのベッドで眠らなくなったサトシを、
いつまでもソファで寝かせるわけにはいかない。
コーヒーを口に含んだサトシはいつものように涙を流す。
その涙を拭おうと、そっと手を伸ばしその頬に親指を滑らせても
その涙はかわらずその頬を伝っていく。
すっかり痩せてしまったその体を抱き寄せても
温もりを与えることすらかなわない。
好きだよ
誰よりも
あなたが好き
俺の言葉はもう、あなたには届かない。
俺にはもうなにも出来ない。
カチャリと扉が開く音がする。
「智くん…」
やつれた貴方を見て悲しそうな顔をする3人。
サトシをこんなにして、ごめんね
サトシのこと、お願いね
この家を決して離れようとせず、葬儀も記者会見も、どこにも顔を出さなかったあなたを
この3人は今まで必死に守ってくれた。
そろそろあなたもあなたがいるべき場所に戻らないと。
あなたには幸せになってほしいから。
このままでは
だめなんだ。
俺のことなんて忘れて幸せになって
なんて言えないよ。
愛してるから
忘れていいなんて
言えない。
俺のこと忘れないで。
俺はずっとここでサトシのこと
待ってるから。
幸せになって
そしてあなたが最期をむかえるとき
ここに戻ってきて。
俺はそれまでここで待ってるから
サトシと二人の世界で
ずっと
待ってるから
あなたが好き
あなたと
二人の世界に戻れるまで
それまで
待ってるから
End
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作者名:caplie | 作成日時:2017年8月15日 22時