真夏の夜は貴方を想う3【SS】完結 (ページ13)

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2人の世界ページ13

今日は現代文の授業だ。

眠っている子もいる中、私は目が冴えている。
もちろん、櫻井先生の授業だから。

眠っている人の気が知れない
そう思いながら右隣の二宮君を見ると爆睡中。

カツ、カツカツーー

櫻井先生の板書の音が響く。
先生の手はとても綺麗で思わず見惚れてしまう。

決して、綺麗な字とは言えないけれど
そんな字すらも愛おしい。

私は先生の言葉を一言一句聞き漏らさないよう
ノートに書き留める。

先生が教室を見渡す。

「っ…。」

目が合った。

気のせいかな、
先生がフッと笑った、そんな気がした。

綺麗な顔…
先生から目が離せない。

しばらくボーッとしてたら、

先生が私の横に来た。

「よそ見すんなよ。」

ボソッと私の頭の上でそう呟く。

ドキッ…

さっき目が合ったの、気のせいじゃなかったんだ…。

「こら、起きろー。」

「……ん」

1人でドキドキしていたら、
櫻井先生は隣の二宮君の机をトントンしてる。

ふと香る先生の匂い
私の鼻腔をくすぐる。

教卓に戻る先生を目で追っていると、

パチッーー

最後にもう一度目が合った。
見つめ合ったまま時が止まる。

いつかの二宮君の言葉を思い出す。

『お前を見る先生の瞳、
　これ以上ないってくらい優しい目してたよ。』

……まさか、ね。
きっと、気のせいだよ。

二宮君の勘違い。
そう思うことにしよう。