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夕焼け空 ページ2

…銀時は強い。私よりもずっとずっと。私の中で二番目に強い。一番は松陽だから。私が何回挑んでも、どうしても勝てなくて、いつも負かされているから。いつかは絶対に勝ってやるつもりでいるけれど。そのために私は、日々稽古を怠らないのである。


…でも、あの男の子はとても強かった。銀時とあれだけやり合っている人を見たのは、初めてだった。多分男の子は私達とそう年齢は変わらないだろう。銀時と同じくらいに見えたから、多分私より一つ二つくらい年上なのだろうけれど。それでも、同年代で銀時とあそこまで戦えるのは、……すごいと思った。


そんな強い彼でも、銀時には敵わなかった。やっぱり銀時は強い。でも、きっと彼も途中で、自分自身が銀時に敵わないことを悟っていただろう。圧倒的な差を理解したはずだろう。きっと他の子なら、降参する道を選んだのだろうと思う。


…けれど、男の子は降参なんてしなかった。


何回倒されても、彼は何度だって立ち上がって、銀時に向かって行った。諦めなんて言葉は知らないのだと言うように。竹刀を握り締めて、力尽きるまで戦っていた。私はその場面を、多分、そこにいた同門の誰よりも近くで見ていた。


……そんな彼が、あの男の子が、その姿が、私の頭から離れない。夕焼け空を眺めながら、思い浮かべるのはそのことばかり。あの男の子のことばかりだ。


…まだ二回しか会ったことがない彼が、不思議と脳裏から離れない。思い出してはまた、胸の中が熱くなってくる。知らない感覚だった。


「……また、会えるかな…」


…気付いたら、そんなことを呟いていた。私のそんな独り言は、風にさらわれて、何処かへ消えてしまったけれど。


…と、ぼんやりと茜色を見つめていれば、視界の端で、何かが動いた。視線をそっちへ反射的に向けてみると、そこには塾の門があって、そこを一人の男の子が歩いていくのが見えた。

…紫ががった黒髪に、なんだか高級そうな着物。

……彼だ。そう思った時には、私は弾かれるように腰掛けていた縁側から駆け出した。下に置いてあった靴を履いて。


……また会えるかな。その言葉はどうやら、こんなにも早く言霊としての力を発揮してくれたようで。


「待って!!」


門を出て、家に帰ろうとしているらしい彼の背中に、呼び掛けた。畑が広がる静かなこの場に、私の声は響いていく。彼は少し驚いたように肩をピクリとさせて、こちらを振り向いた。茜色が映り込んだ翡翠色と私の目が合って。


「……お前は…」


……男の子はポツリ。私を見据えてそう呟いた。

一人しかいない→←掴まれた



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組   
作品ジャンル:アニメ
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ピピコ(プロフ) - 月猫さん» な、なんだか皆さんのお宅の機械が壊れまくりですね…!!どういうことなんでしょうか…!!パソコンが壊れるって大変ですね…!!存分に気晴らしちゃってください^^ (2017年11月1日 21時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
月猫(プロフ) - 私もパソコンがポックリです・・・!急に動かなくなりました(汗)親に怒られ、気晴らしにスマホをいじっている今です。 (2017年11月1日 21時) (レス) id: 84e6bcc189 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» そ、それは…!大変じゃないですか…!!ヒエッヒエッだなんて…!!冷凍ご飯がヒエッヒエッだなんて…!!えっと、取り敢えず獅子の子さん家の電子レンジさん、お疲れ様でしたアアアアッ!!(笑 (2017年11月1日 21時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピピコさんっ! 我が家の電子レンジがついさっき壊れました! 冷凍ご飯をいくらチンしてもあったまりません、ヒエッヒエです!…唐突にすみません、境遇が似ていたのでついコメをしちゃいました(笑) (2017年11月1日 20時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 「おおかみこどもの○と○」を越えるだなんて…ちょっと恐れ多いです…!とはいえ、感動して頂けているみたいで嬉しいです!夢主ちゃんの秘密が明かされ、物語がヒートアップしていくのでお楽しみに!そして、ありがとうございます、炊飯器も浮かばれるでしょう(笑 (2017年10月29日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2017年10月13日 17時

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