Another story No.2【夢の中で〜カゲロウデイズパロ〜】before ページ24
八月一五日の午後12時半くらいの事だった。
病気になりそうな、良い天気で熱い日差しの中で、私と中也は、することも無くて暇だから、
楽しく話していた。
中也曰く、「暑いし汗はかくし、夏はやっぱり嫌いだな」だそうだ。
家で買っている黒猫のリリを撫でる中也は、何とも言えない表情をしていた。
「そろそろ帰るか」と言い、中也はリリを抱いて横断歩道を渡ろうとした。
けれどその時リリが中也の腕から抜け出ていってしまった。
「あ、おい」と、リリを追いかける中也。私は「危ないよ!」と声をかけようとした。
けどその次の瞬間、私の目に入って来たのは、横断歩道の、赤に変わった信号機。
バッと通ったトラックが、中也を引きずって泣き叫ぶかの様に嫌な音を立てた。
私は目の前で起こった光景に、目を見開いて立ち尽くすしかなかった。
周囲がざわつく。
血飛沫の色が、愛しい彼の香りと混ざりあって、むせ返った。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
その時、何処からか声が聞こえた。
「嘘じゃ無いぞ」
陽炎が、私を見てそう言って、嗤った。
全部、夏の水色をかき回している蝉の音に眩んで、私は意識を手放した。
・
目を覚ましたのは、時計の針の音が鳴り響くベッドの上で。
今は何時だろう?そう思い、時計を見る。
八月十四日の、午前12時過ぎくらい。
やけにうるさく鳴いている蝉の声を、鮮明に覚えていた。
不思議だなぁ。
夢と同じ公園で、私は今、中也と話している。
公園に来たら、夢も思い出したし。
私は何だか胸騒ぎがして、「もう帰ろう?」と中也に言った。
中也は私を見て少しだけ目を開いたが、すぐに「嗚呼、そうだな」と言って立ち上がった。
少し歩いて大きな道に抜けた時、何故か周りの人は皆、上を見上げて、口を開けていた。
何だろうと思い、私と中也も上を見上げる。その瞬間。
落下してきた鉄柱が、中也を貫いて突き刺さった。
耳をつんざくような悲鳴と風鈴の音が、木々の間で空回りしているみたいだ。
違う。
これは夢だ。夢だ。夢だ!
また、声が聞こえた。
「夢じゃ無いぞ」
夢の中で聞いた声と、嗤い声がした。
眩む視界と、薄れ行く意識の中で中也を見る。
・
・
その顔は、笑っている様な気がした。
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作者名:妃薫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/
作成日時:2017年3月29日 18時