【中原中也】中也さんと【短編集】

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「......俺より猫の方が、いいか？」

予想外の言葉に、身体が硬直する。

「え、え、なんで」
「手前、俺にはあんな顔しねェだろうが」

むすっと子供みたいに頬を膨らませる中也のことを、不覚にも可愛いと思ってしまった。

「......あの子、中也に似てたから、......中也は仕事ばっかりで、構ってくれないし」
「......莫迦か、素直に云やいいだろ」

中也の大きな手のひらに、わしゃわしゃと頭を撫でられる。頭の上に、直に伝わる温もり。
＿＿手套、外してくれたんだ

「......中也」
「ンだよ」
「好きだよ」
「......猫より？」

耳まで真っ赤に染め上げながら、小さな声でそう云った中也。

「云わなくても、分かってるくせに」
「......聞きてェんだよ、手前の口から」
「......猫より、中也が好き」

よくできました。
今まで見たこともないくらい、柔らかく微笑んだ中也。
＿＿矢っ張り、大好きだなあ。
何時もと変わらない昼下がりなのに、こんなに幸せなのはきっと、彼が居るから。




＿＿＿＿＿




「この猫、捨て猫なのかな......」
「......手前がこれから何て云うか、予想がついた」
「......飼っても佳い？」
「勝手にしろ」
「やったあ」
「其奴ばっかじゃなくて、俺にも構えよ」
「......へ、......もっかい」
「......云うか！」

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