抱えた闇は知っている Ｆirst,Story

16＊時間よ止まれ ページ20

［SIDE:A.T］


秀明帰り。

私は、逃げた。

逃げたんだ。

自分は逃げることしか出来ないのかなぁ。

家に着き、ピンクのスーツケースを見る。

紙切れが貼ってあった。

『貴方のもの、全て持って行きなさいね。

　何一つ残さないでちょうだい。』

私の事を忘れたいってこと？

私は、そんな存在だったんだ。

涙が流れた。

こんな家、どうでもいいのに。

「新しい人生を送ってやるんだ」

ピンクのスーツケースを持って、
私は二階へ上がった。

Tシャツ、スカート、ズボン、ぼうし。

全部詰めた。

何一つ残さないように。

靴だって紙袋に入れて詰めた。

一時間後、全ての物を詰め終わった。

家具は、ママが処分するらしい。

フッと勉強机の上の写真を見つめる。

小学6年生のみんながいる。

若武、黒木君、上杉君、小塚君。

翼はまだいないけど、
翼との思い出もいっぱいあった。

ごめんね。

最後があんなバイバイで。

ごめんね。

最後があんな表情で。

ごめんね。

最後があんな言葉で。

もうみんなとは会えないなもしれない。

なのに、なんであんなさよならに…、

してしまったんだろう…。

今更後悔しても時間は戻らないはずなのに。

『時間よ戻れ』

そう思うのは、なぜだろう。

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