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brother? ページ20

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「なんでも見えるんだね…、そんな高いとこ居たら風が強いんじゃない?」

「ううん、ちょうどいい……」


親しげに話しかけるこの男は誰だ?

智も気を許しているように見える……いないと思ってたけど智の友達か?

だけど…友達なんてできるだろうか、こんななのに。


長身の彼が「風」と言ったので、思い出したようにまた智は俺たちに背を向けて

風を浴びようとした。


よほど、気持ちいいんだろう…母の手で撫でられた子どものような表情。


「気持ちいいね、今日は…」

「今日は涼しいから」

「そうだね。…でも大ちゃん、そんなとこ行かなくても風は吹くし、空も山も街も見えるよ?」

「コレが邪魔で見えなかった」


カシャン、と智がフェンスを叩いた。
長身の男は、ふふ、と穏やかに笑う。


「そっか…網のせいでよく見えなかったんだ」

「うん、」

「それにしても高いよなあ……怖くないの?」

「ぜんぜん」

「大ちゃんは高いところが好きだね?」

「大好き……だって、」

「うん…」

「だって全部……おもちゃみたいだ……」


ぼうっと、遠くの遠くを見つめて、呟くように智が言う。

長身の男は 慣れた様子で、智との会話を上手に滑らかにつないでいった。


「ミニチュアの模型みたいだもんね、車とか。こっから見ると…」

「うん…、ミニチュア」

「オレも高いところは大好きだよ?」


男がそう言ったとき、智がぱっと振り向いた。
その瞳が映しているのは、山や空や街並みじゃなく、長身で優しげなその男。


「ほんと?そうなの?」

「そうだよ、一緒だね?」

「うん」

「ふふ…、ねえ大ちゃん、オレさあ…」

「ん?」


もうそのときにはほとんど、智の興味は風や景色から離れていた。

ゆっくりと、固く結ばれた糸をほどくように…その男は語りかける。



「ずっと大ちゃんのこと見上げてたら、首が痛くなっちゃった(笑)

 ……降りてきてコッチで話そうよ。ずるいな、大ちゃんばっかり楽ちんで」



魔法がかかったみたいに、風が止まって


「うん」


さっきまでフェンスにしがみついてたくせに。

智が猫みたいにしなやかに降りてくると同時に、

野次馬の生徒たちはぶわっと散らばって、くすくすざわざわ話をしながら屋上から出て行った。




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作者名:きんにく | 作成日時:2020年4月19日 0時

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