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country road ページ13

その日の帰り道で分かったことは6つくらいある。


まず、智が同じ学年の隣のクラスだったということ。

授業は比較的まじめに出席しているが(まじめに聞いているかは謎)、数学だけは抜け出してしまうほど嫌いなこと。

智は意外と家族を愛していること(特にお母さんのことを)。

髪を金に染めたのは「夕日が当たると綺麗だから」(自分からは見えないじゃないか)。

智の耳は自分にとって都合の悪い話を受け付けないということ(うすうす気付いてはいた)。

だけどこっちが言葉を選べば、ふつうの会話ができること(でも智は言葉を選ばない)。


…である。

最初のやつは、俺が休み時間、机に突っ伏して寝ずに顔を上げて、誰かと言葉を交わしていればすぐに分かることだったのだが。


ぽつぽつと街灯がともる帰り道を、ぽつぽつ言葉を零しながら歩いた。

コンクリートの割れ目から生えた草の束。その中から虫の鳴き声が聞こえるたびに、智は立ち止まって耳を澄ました。時にはしゃがんで。

「…ったく(笑)そんなしょっちゅう止まってたら夜が明けるよ?」

「うん」

あんまり長い間しゃがみ込んでいるときは、できるだけそっと声を掛けると、案外あっさり腰を上げて歩き出す。


俺の言うことを聞いたのか?それとも単に疲れているだけなのか?やっぱりただの気まぐれ?


と、俺の中で思案は尽きなかったけど、

ぼーっと周りを見ながら、半歩後ろをついてくる智に、なんだか獣を手なずけたような気分になって嬉しかった。



……ん?

ついてくる…?


半歩後ろを【ついてくる】?




「智…、おまえ家どっちよ?」


そう聞いた時には、もう俺の家の塀が見えていた。


「ん?」


きょとんとした顔を向けた智は

くるりと振り返り、ひとさし指で方向を示した。


「あっち」


その繊細なひとさし指がさしていたのは、

俺たちが肩を並べて歩いてきた道。


「は?逆方向じゃん!なんで?どっから?」


不思議そうに丸くなった焦げ茶の瞳に、俺の間抜けな顔が映っている。


「ガッコウ」

「はああ!?」


.

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年4月19日 0時

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