HE love... ページ23
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「…大ちゃんと、一緒にいるのがちょっと…、疲れちゃって」
自責の念に潰されたような苦笑いで、相葉くんは話す。
空に手を伸ばすのをやめた智は、起きているのか眠っているのか…気持ちよさそうに目を瞑っていた。
「中学校まで、ずっとオレと大ちゃん、べったりでさ(笑)
オレは、今のカズみたいに…『気がふれてる』とか
『頭おかしい』とか言われてる大ちゃんの行動を、全部隣で見てた」
雨の中で頬を濡らして笑う智。
ペットボトルの底に口づけた智。ガラスの破片を食んだ智。
「オレだって、大ちゃんが常識的じゃないことくらい分かってたけど。
でもなんて言うか…憧れてたっていうか…
そういうときの大ちゃん、すごいキラキラしてるじゃない?
自由に生きてるふうに見えて。だから、それを見てたかった」
「分かるよ…」
同意すると、相葉くんの表情は少し和らいだ。
智を見つめる目はこんなに優しいのに…、彼が智から離れなければいけなくなった理由は、なんだろうか。
扱いにくい、とか、自分勝手で奔放だからとか…そんな簡単なものじゃない気がする。
「でもね…、だんだん、苦しくなってくるんだよ」
「苦しく…?」
「うん…きっとカズも、これから先分かると思う」
「どういうこと?」
「こんなこと、今のカズに言いたくないけど…」
深い深い緑を湛えた瞳から、つ…と一粒だけ、涙が落ちた。
智が大好きで仕方なくて、口に入れたくなった緑の眼だ。
きっと智なら、すかさずこの涙も舐め取ってしまうだろう。
「大ちゃんと一緒にいるのは…苦しいよ…、」
フェンスの上で振り返って、相葉くんを見つけたとき。
智は、嬉しそうに笑顔を見せた。
相葉くんの質問に、いつもより饒舌に答えた。
きっと智は、相葉くんが手のひらサイズに小さくなったら
抱きしめて撫でて引っ張ってめちゃくちゃにして
しまいにはごくんと飲み込んでしまうだろうと思った。
それほど、愛しているんじゃないかって、思った。
「大ちゃんは…、感受性が強すぎる…
空も、海も、花も…
人のことも…ぜんぶ…
ふつうには、愛せないんだよ…」
【ふつうには、愛せない】
相葉くんのこの日の言葉は
この先、さまざまな場面で俺の胸に突き刺さることになる。
そのたびに俺は
この日屋上で見た、抜けるような青空と、ちぎれたひこうき雲
そして、無防備な智の寝顔を
怖いほど鮮明に 思い出すのだ。
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作者名:きんにく | 作成日時:2020年4月19日 0時