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shine ページ11

割れた窓ガラスは、太陽の光を受けてキラキラと光っていた。


智のその行動に、周りのヒソヒソ話も、先生の怒りの声も一度停止した。



窓に近寄って、クモの糸のように走る割れ目をじっと丁寧に観察し、キラリと光る尖りに まぶしそうに目を細めた。

廊下に散らばったガラスは、智の上靴に踏まれてパリパリと砕け、細かくなっていった。
小さくなった足元のそれを、ゆったりとした動作で拾い上げると、それをまた太陽に反射させて嬉しそうにまばたきを繰り返す。

その自由でゆららかなまばたきは、流れる時間のスピードを遅くした。


そして


たっぷりと太陽の光を浴びたガラスの破片を、愛おしげに見つめると

躊躇なく、柔らかそうな唇で食んだのである。



ひっ、と生徒の集団の中から悲鳴のような声が漏れるのと同時に

全員が、止めていた呼吸を再開するように空気が動き出した。


「何をしてる!!やめんか!」


我に返った先生が、智の手からガラスをもぎとった。
食んだときに切れたのだろう、唇からぷっくりと丸い血が出て来て、粒になって顎を伝っていく。


血を舐めとりながら、強く掴まれた手首に顔をしかめた智が、しっかりと先生の目を見た。


「おれこんなの知らないよ?やってない」

だけど先生は気味悪げな瞳で智を見つめ返し、「信用できるか!」とさらに怒って、
ガラスの前に居させるのは危険と判断したのか
また別のところへ智を引きずって行こうとする。

放せ放せと暴れながら連れていかれる智を、生徒たちは好奇心や興味や同情や嘲笑をぐちゃぐちゃに混ぜた目で見ていた。


俺は、雰囲気に飲まれて何もできないでいた。



智が見えなくなったあと、廊下は騒然としはじめ、すぐに野次馬のアーチは解体された。

「見た?」「やばくない?」「頭オカシいだろ」「障害?」「かわいそう」「ホントは誰なん?」「てゆうかあれ誰?」「知らん?1年の大野だろ、中学でもやばかったって」


気が抜けたような大きな声で話し出す。

なんだよ…ひとりも味方いないのかよ…


絶望的な気持ちになって、

傍にいた人のよさそうな長身の男子に、藁にも縋る思いで話しかけた


「ねえほんとはやってないよね?大野じゃないよね?」

「え…」


突然話しかけられ驚いた様子のその人は
黒目がちな目をうろうろさせて、呟いた


「…仕方ないよ……、いつも……ああなんだ…」


そしてくるりと身を翻すと、早歩きで行ってしまった。

PET bottles→←glass



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作者名:きんにく | 作成日時:2020年4月19日 0時

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