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black(side O) ページ22

また夜になってしまった。


部屋でひとりになるのが嫌だったので、苦くて嫌いなピーマンもゆっくり全部食べて、ギリギリまでリビングに居ようと思った。

でも21時になったら、母ちゃんが「よく食べました」と嬉しそうに言ってお皿を下げた。

まだ下げないで、と思った。

ピーマンでもニンジンでもいいから、もうちょっと食べていたかったけど、ああでもそれはウソ、ふたつとも大嫌いだしお腹はいっぱいだった、でも、ひとりになりたくなかった。

テーブルに肘をついてテレビを見ていたら、「お風呂入って寝なさい?」と言われた。

ピーマンをちゃんと食べたというのに、母ちゃんは薄情だった。こんなにもおれがココに居たいのを無視して、お風呂に入って寝ろと言ってくる。


「いやだ」と言って、ひとりになりたくないアピールをしたのに、「わがまま言わないのー」と、まったく気付いてくれない。
極めつけに、「最近寝不足なんでしょ?はやくベッドに入りなよ」。


「眠れなくても、横になってるだけで疲れは取れるみたいよ?」


違う、ちがう…、と思っても、どうやったらこの怖いのが伝わるか、全然分からない。

これ以上ぐずぐずしていたら、母ちゃんを困らせてしまうので、諦めてお風呂に入ることにした。




.




また夜になってしまった。22時だ。


閉めたカーテンから、ちらりと夜を覗いた。星と月が見えない。暗い暗い雲が、立ち込めていた。

ふっ、と気を抜いたら、窓に反射して自分の顔がうつった。

濡れた髪から、ぽたりと雫が落ちる。明日は雨かもしれない。


---『人を、不幸に、してるって、まだ分からない?』


シャッ、と急いでカーテンを閉めた。

眠たい頭が、ずきんと痛む。くらくらしてしんどいので、ベッドに潜り込んだ。


「んん……、怖、こわ」


できるだけ息を立てないで、ぎゅっと身体を小さくする。

夜には申し訳ないけど、部屋の明かりをつけっぱなしにさせてもらう。

暗くすると、ぼんやりした頭では、目を瞑っているのか開けているのか分からなくなって、ふらりと夢の中に落ちてしまいそうになるから。


----『疫病神が。』


最初は、うまく、朝までじっとしていられたのに、だんだんそれも出来なくなってきた。

目を開けて、息を潜めていても、ソレは唐突にやって来る。


----『いつもいつも、お前のせいで』


頭が痛い。

朝日が昇るまで、あと8時間だ。


歌を歌おうかと思ったけど、疲れて声が出せなかった。

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きんにく(プロフ) - くろしばさん» 温かいコメントをありがとうございます、他の作品のことも見てくださっているのですね・・・こちらこそ感謝が足りません。日々精進していきます!ありがとうしか言葉がでなくてすみません(笑) (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - ゆきのすけさん» 素敵なお言葉をいただけて嬉しいです!知識不足文章能力等、まだまだ課題はたくさんですが、そう言っていただけると救われます。一生懸命書きます!ありがとうございます。 (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - 唯一無二のストーリーはもちろん、その繊細な文章構成や選び抜かれた表現にはいつも驚きや優しさがあり、とても強く感情を揺さぶられます。この作品をはじめ、きんにくさんの作品に出会えたことに感謝するばかりです。微力ながら、これからも応援させていただきます。 (2020年6月1日 2時) (レス) id: a32bce887b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - 情景が、主人公の表情が、心情が、胸が痛むほど繊細に流れこんできました。考えること無く流れこんでくるそれはとても心地がいい筈なのに、その分強く心を揺さぶられました。この作品に出会えて良かった…有難う御座います。これからも、心より応援しております…! (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - シリーズの一話を何の気なしに覗いてから、気付いたら狂ったようにこの作品だけを、求めて読んでいました。20年間生きてきて、占ツク以外でも沢山の本を読んで来ましたが、こんなにも引き込まれた物語は正直言って初めてです。 (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年5月17日 12時

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