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「ねーAー俺、疲れたよー」
男の人ってウィンドウショッピングが嫌いなのか何なのか、店を見て回っていろいろ洋服を見てるとすぐに疲れたって言う。
「じゃあベンチで休憩してて!私はまだ見てるから!」
「……女の人って本当、服見るの好きだよね。こう言うのって感覚で買うものなんじゃないのかい?」
自分の思考と真反対のことを言われたので言い返そうとしたが、彼が荷物を持ってのそのそと近くのベンチに足を向けたので何も言えなかった。
何店舗か回ってコートを吟味していると、やはりどれも可愛くて仕方ない。
トレンチコートだと定番すぎる?ダッフルは違うな。チェスターは大人っぽすぎる?
いろんなコートを見て回っていると、人がちらほらいる中でも一層目立つ銀髪で長身の男性がこちらに向かってくるのが分かる。
「A!」
私を見つけた彼の元へ私は軽く走って向かう。
「ヴィクトル!……もう休憩は終わり?」
ゆっくりこちらに向かう彼に話かけると紙袋を差し出されたので反射的に受け取る
「何これ」
何これって言ったけど、何となく分かる。この女性ブランド、紙袋の大きさ、重さ、コートだ。もしくはスーツだ。
ガサッと紙袋を傾けて隙間から商品を覗き込むとやっぱりコートが入っている。
「こ、これ!」
こ、困る。このコート絶対いい値段する……!
「いつまでも俺を待たせてるから、ベンチで店先を見てたらAに似合いそうなコートがあったから買っちゃった」
買っちゃったではない。値段に私は恐怖しているが、いやらしくて値段なんて聞けなくて私は絶句する。
「黙るほどビックリした?」
「し、した。」
どうしよう、相手からしたら安いのかもしれないが、あわあわと私は妙に冷や汗が出てくる。
あ、そうだ。さっき買ったの今渡そう。
「ヴィクトル、これ」
カバンの1番上に入れた袋を慌てて取り出してヴィクトルに押し付ける。
「わお。これは?」
「開けてみて」
テープを簡単に開ける前からヴィクトルは嬉しそうな顔をしている。
「手袋だ!」
「コートより安いものかもしれないけど、さっき買ったスーツに似合うと思って後でプレゼントしようと思ってたの」
ここで渡すとは思ってなかったけど。
視線を下にする私の頭に影ができる。
「ちょっと、ヴィクトル?!」
「ありがとう!すっごい嬉しいよ!」
「わ、分かったから通路上で抱きしめないで!」
恥ずかしいから!!
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作者名:かなぁ | 作成日時:2016年11月25日 14時