【SF巨大生物】R E D ー僕が世界を救うその日までー【オリジナル】

秘密基地 ページ35

国民の衣食住は国に管理されている。

食料は振り分けられたものが週に一度配給されているが、ここ最近はレトルトや缶詰類の長期保存食が増えてきているように思う。


基本的な食料難に加えて、農業や漁業が盛んな地域が放射能汚染レベル7の被害を受けた事や、食品工業地帯の壊滅が大きな痛手となった。


そもそも生物(なまもの)を保存しようにも電力不足で、民間施設や住宅で24時間の冷蔵貯蔵が不可能だからという理由もあるのかもしれない。


《ザムザ》の襲撃で失ったものは命だけではないのだ。

人間は衣食住が崩れると、精神的にダメージを受ける。

無駄と知りながら世界中で連日、デモや暴動が起こっているが、警察や政府、軍も本来の敵である《ザムザ》に手一杯で、人間同士の争いに改善の見通しは無い。





そういう背景があるので、今日の朝食も昨日に引き続きレトルトカレーにパンを添えた。

食後のインスタントコーヒーを啜(すす)りながら、ふと思った疑問を蒼生に投げかける。


「お前、飯はどうしてたんだ」

「ふふっ。僕の秘密基地の貯蔵庫から、ちょっとずつもらってるの」

「秘密基地？」


カップの中のコーヒーをスプーンで混ぜ、そこへミルクを入れた時に出来る白い渦巻き模様に満足気な様子で答える。


「そうだよ。黒羽(くろは)自衛隊基地。完全じゃないけど機能させて拠点にしてるんだ。D地区ではね、テント張ってるの。よく赤間山にキャンプしに行ったから慣れてるし」


黒羽自衛隊基地は、B地区内にある捨てられた基地じゃないか。
昨日の死骸発見現場からも、そう遠くない場所だ。

そういえば、昨日あの場所で赤い布が揺らめくのを見た事を思い出した。


「もしかしてお前、昨日見てたのか？」

「うん。杏里、危なかったね」


砂糖がないのでミルクをたっぷり入れているのだが、それでも苦いらしく、一口飲むごとに口をへの字に歪めている。


やはり赤い布は蒼生のローブだった。

となると、小さな靴跡も蒼生のものだった訳だ。


「接近して来る《ザムザ》の声、お前には聞こえてたんだろ？だったら・・・教えてくれたらあんな目に遭わずにだなぁ・・・」


ちょっとした皮肉のつもりで言ったのだが、蒼生はテーブルに身を乗り出し「そんな事言ったって！」と、大真面目に反論してきた。

弱点→←小さな歯車と大きな盤

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