分岐 ページ34
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Aは教科書から目を離すと、薬指に光る指輪へ微笑みを向けた。
「そんなに気に入ってくれたのかい？」
二人きりの図書室にリドルの声が響く。
Aは頬を紅潮させながら、「とっても。こんな素敵なプレゼントは初めて……私の宝物だよ」
はにかんだ表情を浮かべた。
無邪気に喜ぶAの姿を見ているだけで、心が満たされる。リドルは微笑すると目を伏せた。
瞳の奥に、死の恐怖に怯えるAの姿が蘇った。
リドルが辿った数奇な人生を打ち明けところで、きっとAに人は殺せないだろう。
だからといって、ただ指をくわえて見ているわけにはいかない。
友人の仮面を被った死神がAの命を狙っているのだ。Aの死はまだ先のことだが、一刻も早くAを死の運命から解放したい。
――インペリオ
もう、Aを服従させる道しか残されていない。
Aのための贄にも目星がついている。
いじめられっ子のマートル。いつも3階の女子トイレに一人でいることは前の世界で把握していた。
舞台は整っている。
あとは『インペリオ』たったその一言を杖にのせるだけ。それでAを救うことができる。
それなのに、Aに許されざる呪文を使うことに、ひどく抵抗があった。
いずれ人を殺したことを、Aは知ることになるだろう。
そのときのことを思うと、リドルの心に躊躇が芽生えるのだ。
では、またAを死なせるのか？
一筋の光も差さない水底のようなあの世界で、またAの亡骸を抱き締めるのか？
リドルは力なくAに視線を向けた。
指輪を見つめ微笑むAの瞳は、ヒッポグリフで駆けた夜のように明るく輝いていて――。
リドルは葛藤の末に、杖に手を伸ばした。
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くろさわ(プロフ) - mikittyさん» お返事が遅くなりすみません！評価とお気に入り作者登録ありがとうございます！更新再開しましたらまた読んでいただけると泣いて喜びます！ (4月24日 20時) (
レス) id: 107fffb2fc (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 最初から最新話までいっきに読みました。世界観や言葉選び、関係と心の変化、物語の展開、全てにおいてドストライクでした。最高です。お気に入りと高評価させて頂きました！お気に入り作者にもしました！またの更新、とても楽しみにしております！ (3月22日 8時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
くろさわ(プロフ) - とーるさん» →なので、図書室に帰ったとて夢主は笑うことはなく…あまりにもリドルが不憫なので救済エンドを書いてあるのですが更新するか迷ったまま放置してました。。気になるところで切っててすみません！新章もうしばらくお待ちくださいませ！ (11月26日 16時) (レス) id: 107fffb2fc (このIDを非表示/違反報告)
くろさわ(プロフ) - とーるさん» 夢主はトムに恐怖心もありますが、悲しみの気持ちの方が強かったりします。好きな人の心を壊したのは自分だと思っているのです。でも、【分岐】で良心を手放してしまったリドルには夢主の感情を理解することは出来ず、すれ違ってしまっているのです。文字制限のため→ (11月26日 16時) (レス) id: 107fffb2fc (このIDを非表示/違反報告)
とーる(プロフ) - メリバでトムがずっと勘違いしてるのは主人公から恐怖を抱かれているということから目を背けているんだろうなぁと思うとすごく愛おしいですね。また新章待ってます！エイブリーの正体が気になりすぎる、、、！ (11月26日 10時) (レス) @page46 id: 2c1a894765 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くろさわ | 作成日時：2022年8月7日 16時
