宝石_1 ページ17
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窓から差し込む月明りに目を細めると、リドルは時計へと視線を移した。約束の時間よりも随分と早い時計の針を見ながら、リドルは苦笑いを浮かべる。浮足立っている自覚はあるが、今のリドルにそれを抑えることは到底無理な話だった。
リドルの脳裏に、ピジョンブラッドルビーの羽根ペンが蘇る。あの深紅の輝きを想うと、自然と口元が綻んだ。
今夜、ピジョンブラッドルビーの羽根ペンが手に入る。もう、前の世界と同じ行動を取る必要はないのだ。
「あ、リドル……元気？そ、その今日はいい天気ね」
時計の針が約束の時間を指したとき、Aが姿を現した。
「元気だよ。今夜は……月が綺麗だね」
リドルが柔らかく微笑むと、Aは不安と安堵が混じった表情を浮かべた。そんなAの様子に、胸が締め付けられる。
ホグズミードの件からリドルの不機嫌さにAはずっと心を痛めていたのだろう。今夜だってリドルとまともに会話はできないと踏んでいたに違いない。
「リドル……もう怒ってない？」
リドルの顔色を窺うAに、首を振った。
「最初から怒ってなんていないよ」
その言葉にAの表情が険しくなる。
「嘘」
「嘘じゃない」
「嘘よ。だって、ずっと私のことを避けていたじゃない。それなのに、怒ってないなんて言うの？」
「ああ、怒ってない」
「何でそんな噓つくの？……もう、図書室で会うこともできなくなるんじゃないかって……」
Aは一度言葉を区切ると、何かに耐えるように唇を噛み締めた。いつの間にか漆黒の瞳には涙が浮かんでいた。
「私がどれだけ……不安だったか」
泣くまいと我慢するAに、リドルは堪らず手を伸ばした。しかし、その手がAに届くことはなかった。乾いた音と共に、指先に痺れが走る。リドルの手はAによって振り払われたのだ。
「A」
出来るだけ優しく声をかけたつもりだったが、Aはビクリと肩を震わせた。
「僕は怒っていない……嫉妬していたんだ」
「……嫉妬？……嫉妬していた……？」
言葉の意味が分からないと言わんばかりに、Aはおうむ返しに繰り返した。
「そう」
「え、待って……誰に？」
「きみとマルシベールに」
「嘘」
Aはまるで自分に言い聞かせるように呟いたが、「嘘じゃない」と言うリドルの真剣な表情が、全て真実だと物語っていた。
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くろさわ(プロフ) - mikittyさん» お返事が遅くなりすみません！評価とお気に入り作者登録ありがとうございます！更新再開しましたらまた読んでいただけると泣いて喜びます！ (4月24日 20時) (
レス) id: 107fffb2fc (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 最初から最新話までいっきに読みました。世界観や言葉選び、関係と心の変化、物語の展開、全てにおいてドストライクでした。最高です。お気に入りと高評価させて頂きました！お気に入り作者にもしました！またの更新、とても楽しみにしております！ (3月22日 8時) (レス) id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
くろさわ(プロフ) - とーるさん» →なので、図書室に帰ったとて夢主は笑うことはなく…あまりにもリドルが不憫なので救済エンドを書いてあるのですが更新するか迷ったまま放置してました。。気になるところで切っててすみません！新章もうしばらくお待ちくださいませ！ (11月26日 16時) (レス) id: 107fffb2fc (このIDを非表示/違反報告)
くろさわ(プロフ) - とーるさん» 夢主はトムに恐怖心もありますが、悲しみの気持ちの方が強かったりします。好きな人の心を壊したのは自分だと思っているのです。でも、【分岐】で良心を手放してしまったリドルには夢主の感情を理解することは出来ず、すれ違ってしまっているのです。文字制限のため→ (11月26日 16時) (レス) id: 107fffb2fc (このIDを非表示/違反報告)
とーる(プロフ) - メリバでトムがずっと勘違いしてるのは主人公から恐怖を抱かれているということから目を背けているんだろうなぁと思うとすごく愛おしいですね。また新章待ってます！エイブリーの正体が気になりすぎる、、、！ (11月26日 10時) (レス) @page46 id: 2c1a894765 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くろさわ | 作成日時：2022年8月7日 16時
