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*154話「パニック」 ページ22

目が合った瞬間、ぶわりと汗が吹き出す。


「A?」

「あ……」


切れ長の目が驚きで見開かれていく。
その瞳の中の感情が見えて、余計に心臓が忙しなくなる。


「久しぶりだな、元気にしてたか?」

「……う、あ」


声帯が仕事を放棄したように、声が出ない。
口が渇く。
歯が噛みあわない。



それまで久しぶりの再会で笑顔だった真赭さんの顔を曇る。

ああ、そうだ。
この人はいつだって周りの人を良く見ていた。
だから……


「A、大丈夫か? 顔色が」

「っ……」


様子が可笑しいことに気づいた。気づかれた。

可笑しいなあ。
ポーカーフェイス、得意なはずなんだけどなあ。

足が震える、手が震える。
心臓がうるさい、胸が苦しい。
夏なのに寒い。
怖い怖い怖い怖い怖い、ナニガ……?



混乱しまくっている脳の命令か、
いつの間にか息が乱れていたことに私は気づかなかった。

だから、真赭さんはそれを心配してくれただけ。
だって、優しい人だもん。
すっごく、すっごく優しい人だもん。

でも、自分の以上に気づかなかった私は、
自分に伸びた先輩の手を思いっきり叩いてしまった。

バシンッという音にハッとする。
目の前には驚いた顔で、不自然に伸ばされた真赭さんの手。


「あ、あ、」

「A、あたしは」

「ご、ごめんなさいっ」

「Aっ」


何か言いかけたのはわかってた。
でも、聞けなかった。ダメだった。

後ろで真赭さんの心配そうな声が聞えた。

それすらも無視して、私は走った。逃げた……。

*155話「いつの間にか」→←*153話「再会」



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星蛍(プロフ) - 麗さん» コメントがすっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。そうですね。検討しておきます! (2020年11月22日 14時) (レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 28ページ こっちゃん とあだ名?で呼ばれていますが、これは固定なのでしょうか? 名前変換出来るのにあだ名だけが固定だと不自然に感じます。 固定の名字から取るなら分かるのですが変換出来る名前から取ったあだ名だと違和感あります。 (2020年11月12日 19時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - ムーンさん» すみません!!変換機能をオンにするの忘れてました。直したので、名前変換できると思います。 (2019年2月25日 17時) (レス) id: 4856ab23f3 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - 名前がずっと古都となっているのですが変換はできないのですか? (2019年2月24日 22時) (レス) id: dbcb69aa60 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 夢花 (仮垢)さん» 返信遅れてすみません!! ほめ言葉として受けとります笑 ありがとうございます! (2019年2月22日 18時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 | 作成日時:2015年10月14日 20時

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