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カタチ。 35 -side 2- ページ18

ミツから鍵を受け取って
控え室に戻ると
タマが次の仕事に向かうために部屋を出てきたタイミングだった。

「「あっ」」

お互い声がハモる。



でも顔を逸らしたのはタマが先で

「おつかれ」

こっちに背中を向けて歩き出したから

「あの!タマ!ごめん、……じゃない、ありがとうっ!」

慌てて声を掛ける。

ごめん、って謝るより
背中を押してくれてありがとう、って言うべきだな、と思ったから。



「ニカのそーゆーとこ、好きだよ」



振り返らないでタマが言う。

そんなの俺も一緒だよ。



「俺も、タマが好きっ」



声を掛けたら立ち止まるタマは

「………誰かが聞いたら誤解するよーな事、大きな声で言わないでよね」

振り返って耳まで真っ赤になって笑いを堪えて言う。



「あはは、ごめん。仕事、頑張って」

「ん。ニカもね。『この後』頑張ってね」



タマの『この後』にはAちゃんとの事が含まれてるのが分かるから

「うんっ」

ちゃんと頷くとタマが笑ってくれた。



タマを見送って控え室で自分の荷物を持つと
マネージャーの送りを断ってタクシーでミツのうちに行く。



ミツんちの玄関を開けると

「にぃ、おかえ………」

ちょうどAちゃんが寝室から出てきたところ。



え、心の準備がっ。

「あ……」

声が漏れたけど言葉が続かないし
Aちゃんは慌てて部屋に戻って勢いよく寝室のドアが閉めた。



うわ、めっちゃ拒否られてる。

そりゃそーか。
あんな態度したんだもんね。



専用のスリッパがいつもの場所にも棚の一番上にも無くて
あ、捨てられたんだ、って分かると
さすがに悲しくなったけどこれが現実だ。
仕方ない。

Aちゃんなら綺麗に掃除してるだろう。
意を決してそのまま上がる。



「Aちゃん、開けていい?」

「……話すこと、無くない?」



Aちゃんからは聞いた事がないくらい冷たい声。

若干声が震えてるし
めちゃくちゃ怒ってるのも伝わる。



「色々、ごめん」

「謝るような事したの?別にしてなくない?」



冷たい言い方に
Aちゃんがもうむしろ俺が嫌いなのかな、って思う。

でもそう思わせたのは自分だ。
さっき目が合った時はAちゃんが嬉しそうにすら見えてたのに。

タマの言う通り
ちゃんと伝えないと伝わらない事もあるな、って思う。



だから言った。

「嫌だったの。可愛くなったAちゃんが、遠くに行っちゃいそうで」

「は?」

返すAちゃんの声はめちゃくちゃ冷たい。

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shizu(プロフ) - ななぼーさんさん» はじめまして!ものすごく嬉しいお言葉ありがとうございます!うわー、本当に嬉しいです💗また書かせていただきます! (2022年11月30日 8時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - さくらさん» うわー!嬉しいです、ありがとうございます!落ち着いたら書こうと思います😊 (2022年11月30日 8時) (レス) @page21 id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
ななぼーさん(プロフ) - はじめまして!いつも作品楽しく読ませていただいてます!shizuさんの作品、本当に大好きで何度も読み返してしまうものもあります!今回の作品も大好きです!!続き、楽しみにしてます! (2022年11月29日 19時) (レス) @page18 id: 613beb2b91 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 最高です。shizuさんのお話しのタマちゃんもニカちゃんもだいすきです!!タマちゃん編たのしみにしています!! (2022年11月28日 23時) (レス) @page18 id: fafa72142e (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - さくらさん» 私の中でタマちゃんって中身もイケメンなんで、結果こうなりました☆タマちゃん編も書けたらなぁと思ってます (2022年11月28日 8時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2022年11月10日 0時

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