カカオ72% Part 5

カタチ。 34 -side You- ページ17

嘘つき。

ニカの嘘つき。



ニカが言ったじゃん。

『いいんだって、頼って。怖いならミツに頼りきれない分だけでいいから甘えたらいいよ』

『俺はずっとひろみちゃんの味方だよ』

って。



なのに、あんな目してさ。



誰かが見てるタイミングだったら困る。
笑ってくれなんて言わない。

でもあんなに敵意むき出しにされたら
さすがに私だって嫌だ。

『こっち見るなよ』

『お前とはもう終わってるよ』

そう言われてる気がした。



もう3ヶ月会ってないし連絡も来ないんだもん。

きっとニカの身の回りで
利害一致するいい人が見つかったんだろうね。



それならニカんちの鍵も返さなきゃだ。

だからにぃに託した。



「あとさ、これ。ニカに渡して」

「ちょっ、Aっ」



にぃが止めてるけど
ごめん、私からは返せない。
ニカに会うと泣きそうだもん。
楽しかったニカとの日々を思い出して何も言えなくなるよ。

ニカだって面と向かって私から返されるより
にぃから返してもらうのが一番いいだろう。



うちに帰るとシャワーを浴びて
ベッドに入った。

もう寝ちゃえ、って思って。

にぃも帰るの遅くなるって言ってたし
ご飯も作らなくていいや。



でも全然眠くならなくて。

気持ちがモヤモヤしてるから余計にだろう。



ため息をついてベッドから出て
一度水でも飲もう、と思って寝室のドアを開けたタイミングで
玄関から物音がする。

あれ、にぃ早いな。

それか一度荷物置きに来たのかな。



「にぃ、おかえ………」



声を掛けて止まる。

そこに居たのはニカで。



「あ……」



ニカが何かを言いかけたけど慌てて寝室のドアを閉めた。



何で？

どうしてココにニカか居るの？



混乱してるとニカの足音が近づいてきて
コンコン、と遠慮がちにドアがノックされた。

「Aちゃん、開けていい？」

ニカから聞かれたけど

「……話すこと、無くない？」

返すのが精一杯。



鍵も返したし
ニカにはもう私は用済みでしょ。

何を今更ニカと話す必要があるの？



「色々、ごめん」

ニカは言うけど

「謝るような事したの？別にしてなくない？」

ただ言い返した。
ニカはただ私との関係を終わらせただけでしょ。
好みじゃない感じになったから。
謝る必要ないじゃん。
私たちは何も始まってないんだから。



「嫌だったの。可愛くなったAちゃんが、遠くに行っちゃいそうで」



ニカが言う。



何それ。
意味が分からなさ過ぎて腹が立ってきた。

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