カカオ72% Part 5

カタチ。 33 -side 2- ページ16

打ち合わせを終えてタバコに行く。

貸切状態でちょうど良かった。
1人になりたかったから。



Aちゃんの悲しそうな顔が
頭から離れない。

だけど、離れたのはAちゃんだってそうじゃん。
他の男と外で待ち合わせして会えるようになってるじゃん。

なのに、何であんな顔すんの？



たばこに火をつけて
ふぅー、と息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

もう一息した所で喫煙所のドアが開く。

入ってきたのはタマだった。



「おつかれ」

「………おつかれ」



ものすごく低い声。

そういや打ち合わせでも機嫌悪そうだったな。



だからそれ以上声をかけずお互い黙ったままになる。



タマはこの後もう1つ仕事だったっけ？

俺はもう終わりだけど
だとしたらタマは次の仕事に向けて集中したいかな。



タバコを消して立ち上がったら

「……ニカってさぁ」

タマが話し掛けてくる。



「キスマイ大好きだよね」



こっちを見ないで目線は煙吸引機のままで言う。



返事をする前に

「キスマイ大事なのは分かるけど、ニカがニカ自身を大切にしないとニカのバランス崩れるよ」

タマは言って煙を吐く。



「別に、大事にしてるけど」

「してない」

「してるよ」

「だとしたら全然出来てない」



めっちゃ否定してくるタマは

「最近のニカ、余裕無さそうで話し掛けにくい。その原因も分かった。さっき」

冷たく言う『さっき』がAちゃんと会った時を指してるのが嫌でも分ける。



「ニカはバカだよ」



ようやくこっちを見て言うタマは

「自分の事になると不器用で、本音言わなくて。メンバー間なら言わなくても分かるかもしれないけど、それって十何年一緒に居るからで数年顔を合わせてるだけの人に伝わると思ったら大間違いだからね」

一気に言うとタバコの火を消して立ち上がって俺を見ると

「1度しか言わないよ」

前置きをして。



「ニカになら任せられると思ったけど。このままだと知らないよ」



冷たく言う。



多分、最初で最後のタマからの忠告。

そのままこっちを見ずに喫煙所を出ていくタマ。



何も言えずにいると
入れ違いで入ってきたのはミツ。

「お、居た」

俺の顔を見るとAちゃんに渡したキーケースを渡してくる。



え、返されたんだ
と思ったら反対の手にミツんちの鍵を持ってるミツは

「ラストチャンス」

って俺を見る。



「片方だけ？それとも、両方？」



ミツが言うから。



迷わず両方受け取ると喫煙所を飛び出した。

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