太陽の当たる場所 10

after Wait for You 1 ページ49

やっと少し、
ほんの少しだけ温かくなった日。

ニカとテーブルに向かい合う。

私たちの腕にはお揃いのブレスレット。



「…仕方ないよね」

「うん」

「多分、何かあった時、いまここで決断しなかった事後悔すると思う」

「…そうだよね」



ニカの顔を見れない。

ニカも私の顔じゃなくて顔の角度的に私の手を見てる。



「………」



お互い言い出せない。

暫く沈黙が続く。



「………荷物、まとめておいてあるから」



言えたのは、こんな言葉。



「…………」



ニカは何も言わない。

そして、私の手に手を伸ばして重ねる。



「ニカ」

「いーよ、後でちゃんと洗う」



窘めると
ニカは食い気味で言葉を被せて言う。

正直なのはいいけど
それを本人の目の前で言わないで欲しい。

事実だけど傷つくから。



「全部、持って帰るの？」

ニカの質問に

「………」

答えられない私。



そのつもりだ。

だってニカにはもう会えない可能性もある。



「……そりゃそうか」



黙ったままの私にニカが察しちゃう。



「…俺のはそのままでいいから」

「でも」

「家に持って帰ってまた洗濯とかめんどいし」



凄く嫌な言い方してるけど
ニカはニカでこう言う事で私への本音を伝えてくれようとしてる。



「花瓶、置いてって。お花育てるのは頑張るから」

「うん」



ニカの言葉に頷く私。



泣くな、絶対泣くな。

言い聞かせて、

「……じゃあ」

とだけ言う。



『バイバイ』とか『またね』とか『さよなら』じゃなくて。

でも『いつか』なんて保証されてないから。



「ん」



ニカがギュッと手を握ってくれる。



「電話、する」

「ん」

「テレビ電話とか」

「…やり方知らない」

「調べなよ、俺も知らないけど」

「知らないんかいっ」



2人で笑い合うけどどこか寂しい。

ううん、ものすごく寂しい。



「行くね」

「ん」

「LINEする」

「ん」



ニカの手が離れた時、やっぱり離れたくなくて
また自分から握る。



「A」

「いいじゃん、洗うから。消毒するし」

「……あ、ヤバ、傷つく」

「わかった？言われた側の気持ち」

「ん、ごめん」



ニカの手を離すと

「……運び終わったらLINEするから」

「いいじゃん、声掛けなよ」

「だめ。接触は少ない方がいいよ」

ニカの顔を見ないで背を向けた。



そしてリビングを出て
山積みの荷物を持てるだけ持って玄関を開ける。



パタン、と閉まるドアと共に
ニカとの同居が終了した。

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