太陽の当たる場所 10

after Dahlia 21 ページ35

当たり前みたいに
ニカの車に向かってたけど。

車の前で気づく。



ダメだよね。



「ごめん、ニカ。私一緒に帰れない」

「は！？」

「荷物、駅のコインロッカーに置いてる」

「そんなの途中で寄るから持ってくればいいよ」

「…こんな大きな車で？」



ニカの車は
めちゃくちゃ大きくて。



「さすがにニカのこの車、目立つでしょ」

「どこの駅？」

「新潟駅」

「……路地裏に停めればいいでしょ」



後ろの席を開けてニカが私のカバンを置く。

中を覗くと
車の中に冷蔵庫まである。

アウトドア好きって言ってたし
友達と車で遠出したり温泉に泊まりで行ったりしてたもんね。



「新幹線の切符も買ったし」

「…返金してもらいなよ」

言いながら助手席のドアを開けるニカに

「私、何処で降りるの？うちまで乗って帰れないよね」

声を掛けたらさすがにニカの手が止まる。



少し考えたニカは

「……駅まで送る。荷物は最低限だけ持って。あと、ロッカーの荷物も頂戴。少しでも軽くして」

助手席のドアを閉める。



「どーしてそう冷静かなー」

ニカは不満そうだけど

「…ニカと、ずっと一緒に居たいから」

一時的な感情で、後で後悔したくない。
今みたいに。



もっとちゃんとすれば良かった。

色々調べたら子供出来ない方法とかいくつかあったのに。



多分私のテンションが下がったのがニカに分かったんだろう。
ニカは私の頭をポン、ってして

「とりあえず、帰ろ。後のことはうちで話そ」

「うん」

助手席の後ろのドアを開けた。



ニカの車に乗ると
車の中は車独特の香りとニカの香りがして。

そしてやっぱり綺麗。



キョロキョロしちゃうと

「あんま見ないでよ」

ニカが運転席に乗りながらムスッとして言う。



だって、ニカの車なんて乗ることないじゃん。

なんて言えないから。



「いいじゃん、見せてよ」

シートのポケットとかの蓋を開けてると

「もー！行くよ！シートベルトしてっ」

運転席から身を乗り出してくるニカは
シートベルトを引っ張って私につけてくる。



距離が一気に近くなってドキッとしちゃうと
ニカも同じ気持ちだったのか至近距離で見つめ合う。

ニカの目が泣き腫らしてて
申し訳ない気持ちになってると

「……早く帰ってきてね」

甘い声で言われてキュンとしたのも束の間

「こんな目腫らしてたら早く冷やさないと大変だもんね」

真顔で言うから。



ニカはやっぱりニカで。



こんなニカが好きだな、って思う。

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