太陽の当たる場所 10

after Dahlia 20 side 2 ページ34

また泣いちゃったけど。

俺のターンになったから
Aにちゃんと
気持ちを伝えようって思った。



「あのね、さっき検査の結果が陰性だったって聞いた時にね、残念だなって思っちゃった」

これはちゃんと一番に伝えよう、って思った。

「それくらい、Aの事が好きって事が分かって貰えなかったのが心外」

何で『喜ばない』が選択肢になるのかな。
…まぁ色々問題はあるんだけど。



でもAとの子だよ？

宝物になるに決まってるじゃん。

…って想像しただけでなんか照れくさくて。



「……ホント、Aはバカだよね。俺がAの事をほっとく訳ないじゃん。こんなに好きなのに」



あの電話だけで終わるような関係にしたつもりなんかないけど。

ただ『好き』って言ったら照れくさくて
笑っちゃった。

そして照れ隠しにAをギュッて抱きしめた。



あと、これだけはお願いしないと。

「ね、A、ひとつだけお願い聞いて？」

「なに？」

「もう二度と、黙って居なくならないで。我慢もしないで。嫌いになったら嫌いになったって言ってから居なくなって」

しょっちゅう繰り返すAに
もうしないって約束させたい。

嫌いになったって言われたらちゃんと話し合って
解決させるから。



結果居なくなるなんて選択肢無くすけどね。



「返事は？あと、『多分、ニカと私、ダメなんだと思う』の取り消しは？ちゃんと聞けてない」



黙ったままのAに聞くと

「…もう、ニカに黙って居なくならない。ニカと私、ダメじゃない」

涙声でギュッ、って抱きついてくる。



「いいの？私、ニカのところに戻っていいの？」

「当たり前じゃん。もう俺のとこ以外行かないで」



泣き声で言うAが安心するように
ギュッ、て同じくらいの力で抱き返した。



「……黙って、居なくなって、ごめんなさい」



泣きながら言うAは
きっと今度こそ、もうしないだろう。



「ん、もーいいよ」



これで十分。

問題は色々あるけど、大事なのはAも俺ももう辛い思いをしない事。



「とりあえず、帰ろ」

「うん」



お互い言いつつも離れなくて。



「Aから離れてよ」

「ニカが離れてよ」

「やだ」

「私もやだ」



全然離れなくて。

でもその瞬間、びゅっ、て冷たい風が吹いたから

「…行こっか」

「うん」

お互い顔を見るとめっちゃ泣いた跡がついていた。



「ぶさいくー」

「ニカこそっ」



笑い合った俺たちは
今度こそもう大丈夫だ。

after Dahlia 21→←after Dahlia 20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す