すぐ近くにいる another story 8

シロツメクサ Ki -side K- 55 ページ4

Aさんの代わりに
ペンギンをゲットした数日後。

お得意さんとこの社長に
飲みに誘われた。

何だかえらく気に入られてて
毎回費用じゃなくて
普通に社長にご馳走されてる。



その社長、小林社長から

「ウチの子が大学卒業してもフリーだったら北山君の嫁にどうだ？」

なんて言ってもらえてて。

「あはは！お嬢さんなら俺よりもっと素敵な人が現れますから」

流してそろそろお開きだな、って時に
社長がまだ飲み足りないらしく

「もう一軒どうだ？」

誘われてしまう。



いま最後のあがきで
近隣のCLUBのホームページを見ては
『ヒロ』って名前の子を探してたから
正直その時間に当てたかった。

けどそんな事も言えないし。



「え、いいんですか？」

嬉しそうなフリをすると

「行きつけの店でね、一見さんお断りで雰囲気もいいし何より会話のレベルが高くて居心地いいんだよ」

社長が楽しそうに笑う。



会話のレベルが、って事は
バーとかなのかな。



連れて行かれたお店は
外見からして高そうなお店。

その店名のロゴを見て
ドクン、って音がした気がして全身が固まった。

『Eve』

字体に見覚えがあった。



……思い出した。

もしかしたら
Aさんのお店じゃねーか？



コンビニでAさんが抱えてたプレゼントに書かれていたロゴの記憶と一致した。



緊張しながら店に入ると

「いらっしゃいませ、小林様」

迎えてくれたのは着物が綺麗なママさん。



案内されて中を見渡すけど
パッと見た感じAさんは見当たらない。



けど間違いない。

絶対この店だ。



今日は休みなのかな。

でも店の名前は分かったし後はどーにでもなる。



ただ一見さんお断りのお店って事は
ホームページ自体無い可能性がある。

ここがダメだった場合その辺も考えて探さないと、なんて思ってると

「この前は居なかったんだけど、経済や株の話得意な子がいるのよ」

ママさんが言う。
そしてママさんが振り返って

「小林さん、紹介するわね」

近づいてきた人。




「こんばんは。初めまして、ヒロです」




ずっと探してた。

声が聞きたかった。
会いたかった。



久しぶりのAさんに気持ちがカーッとなった。




そして俺と目が合ったAさん。

本当に一瞬。
一瞬だけだったけど。

嬉しそうな顔をした。



だけどすぐに悲しそうな顔をしたと思ったら
よそ行きの顔になった。



最初の顔が本音だとしたら
会いたかったのは俺だけじゃないって事だよね？

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