太陽の当たる場所 9

4U 16 ページ25

ガレージに寄って
バイクに乗ると
アクセル全開で家に向かう。



涙が止まらなくて
視界がボヤけそうになる。

ヘルメットの中綿が
涙でベトベトになってる。



でもバイクを止める気も無かった。

一度止まったらしばらく動けなくなりそうで。



家に帰ると
バスルームに直行して
ザッとシャワーを浴びる。



涙と共に汚れを流して
ニカへの思いも忘れられたらいいのに。

こんな訳のわかんないキレ方する私は
さすがにニカに呆れられただろう。



私なら嫌だ。
こんな女。

しかも『バカ』とか『大っっっ嫌い』とか
子供かよ、っていう。



ニカには北山さんのマネージャーみたいな人や
綺麗な女優さんの方がいいよね。

これはさすがにニカに嫌われただろう。



洗濯物を干してから
冷蔵庫からビールを取り出してバルコニーに向かうと
缶を開けて半分くらい一気に飲んだ。

「はあーーーっ」

ため息をつくと少し落ち着く。



遠くに見えるニカの家の方の夜景が
なんだか切なくて。

言いたいこと言えてスッキリしたし
後悔は無いけど
ニカの事が本当に好きで好きで堪らないから
さすがに辛くなってきた。



また溢れてきた涙を拭ってビールを飲み干してると
カラカラカラ、と音を立ててバルコニーの入口が開く。



「…見ーっけ」



聞き覚えのある声。



誰の声か分かるし
子供みたいな言い方をした後だったから
振り返らなかった。



スパスパとクロックスの音を立てて近づいてきたその人は
後ろからフワッと私を抱き締めた。



だからって私は何も言わないし
言う気も無かった。

ただその人がギュッて抱き締めてくれるから
されるがままになっていた。



「……ごめん」



呟くように、言われる。



何に対してか分からないし
大っっっ嫌い、って言った手前、私から何かを言うのもおかしい気がして黙っていた。



しばらくして

「ホントはね、俺の方がめちゃくちゃ妬いてた。不安だった。勝手にAが祐介君たちと過ごす方がいいのかなって決めつけてた」

何も言わない私にその人は話し出す。



びっくりした。

妬いてるなんて思わなかったから。



「…ご飯行ってきなって言ってたじゃん」

「だって嫉妬とかダサいもん」

「…今言う方がダサい」

「うん、そーだね」



ギュッて私を抱き直すその人＝ニカは

「また間違えちゃった。ホントごめん」

本当に申し訳無さそうに言う。



ホント、間違えてばっかだよ。



ニカのバカ。

また泣きそうになってきた。

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