太陽の当たる場所 9

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ニカが
めちゃくちゃ怒ってる。

心当たりがあり過ぎて
もはやどれに怒ってるのか分からない。



でもニカだっておかしいよ。

ご飯食べて来いって言ったり
北山さんのマネージャーさんと仲良すぎたり。



シャワーから出て仕事着を着ると
玄関に向かった。

リビングからニカが出てきて

「…ご飯食べないの？」

不機嫌そうな言い方のまま聞いてくるけど
いまニカのいる空間で食べる気にはなれないから

「食べてきた」

嘘をついてる事がバレないように
ニカの方を見ないで靴を履いた。



その背中でニカのスマホが鳴る。

「はいはーい！おはよぉ！…え？いま？……うん、もう出られるよー！どしたの？……あははは！ミツさいてー。ならすぐ降りるよ？あとどれ位？」

電話に出るニカは私に話す声と違って
ものすごくご機嫌。

しかも玄関は静かだから
相手の人が女の人なのも話してる内容から北山さんのマネージャーなのもすぐに分かる。



……私にはすごく冷たい言い方なのに
北山さんのマネージャーにはものすごくご機嫌な感じで話すんだね。



泣きそうになったから

「…行ってきます」

小さな声で言って振り返らないで玄関を出た。



当然、ニカは追いかけてこないし
昼休みになってスマホを見たけどニカから連絡は無かった。



……もう嫌だ。

なんだか色々嫌になってきた。



充君と祐介君が『彼氏に怒られなかった？』って心配して連絡をくれたけど
心配させたくなかったから『大丈夫』ってだけ送って
おく。



全然大丈夫じゃない。

ものすごく泣きたかった。



その日もニカの家に帰ると
エントランスにニカが居て誰かと話してる。

シルエットを見る限り女の人。



……えっ。

ものすごくびっくりしたけど、
ここでニカに声を掛けるわけにもいかないし
相手の女の人はテレビで見た事がある女優さんだった。



私が入ってきたのに気づくとニカも黙るから
気まずくて他人のフリをしてさっさと中に入る。

エレベーターホールに向かうと
ニカとその人がまた談笑を再開した声が聞こえて
話してる内容は分からないけど「マジで？」って声とニカの笑い声が聞こえた。



もう泣きそうだった。

ニカは私と過ごすより
他の人の方が楽しそうじゃん。



ならもういい。

ニカから借りた服とかだけ洗濯したら
今日はもう帰ろう。



ニカの家に着くと使い捨てのスリッパを履いて
洗濯機に向かった。

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