サイボーグな彼女 16

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キヌエさんのお見舞いの後
Aと温泉に向かう。



と言うのも

「ほら」

お見舞いを終えて帰ろうとしたら
Aのお兄さんから温泉のタダ券と貸切部屋の2時間券をもらう。



「4人で交代で風呂入ると時間かかるから。2人はこっち使うんだよ」

「え？俺とお兄さんとですか？」

「アホか！」



ふざけると怒るお兄さんに由紀さんと笑う。



けど、Aは笑ってなくて。

「ありがと、お兄」

淡々とお礼を言って

「着替え、取りに戻ろうか」

同じく淡々と俺に声を掛けてくる。



「ご飯、途中の美味しい定食屋さんに行こ。多分まだやってるから」

「ん」



Aが言うから頷くとそのまま歩き出すA。

さすがに疲れたのか
何か思うところがあるのか
その両方か。

明らかに元気がないAが気になるし
多分お兄さんはこうなる事を想定してる。



その証拠にお兄さんは口パクで『頼む』って俺に言う。



ああ、やっぱりお兄さんの方が
Aを分かってる。

地味に落ち込む。



頷いてお兄さんたちと別れて
Aと車に向かう途中で

「運転するぞー」

Aに声を掛ける。



いつもなら絶対ダメだって怒るのに

「うん」

無抵抗なA。



普段なら絶対ダメなのに。
ありえない。



さらに

「道分かんねーからAも前に乗れよ」

コレはさすがにダメかなと思ったのに

「………」

無抵抗で前に乗る。



うわー、これ貴重。
少しは甘えてんのかな、と思うとちょっとニヤける。



エンジンを掛けたところでAは我に返ったのか

「ごめん、私、運転……」

慌てて言いかけたから

「いーよ、俺するから。温泉の方向かえばいいよな？」

って抵抗する前に車を走らせた。



さすがに走り出したらAも何も言わない。



むしろ何も言わずに俺を見てくるから

「……何？」

さすがにそんなにじっと見られるとちょっと照れる。



「ありがたいな、と思って」

「へ？」



え？運転するだけで？
と思ってたら

「いま、……ううん、今日宏光が居て良かった、って思うから」

柔らかい声でAが言う。



「ありがとう、宏光」



改めてAから照れ臭そうにお礼なんて言われたら
お兄さんに勝てなかったのも吹っ飛ぶ勢いだけど。



気になるのは無意識でぼーっとしてたりとか
何か思ってるのかじっと俺を見てきたりとか。

昨日からどこか我慢してるんだよなー。



ホント、何隠してんだか。

素直に言って欲しいんだけどなー。

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