この想いの結末は 9

after そしてそれから 6 ページ29

正直最初は不安だった。

家族以外の人と暮らすとか。


でも実際暮らしてみたら
家に帰るとAがいる生活は
本当に『快適』だった。

幸せとかドキドキとかより
目の届く範囲にAがいるっていう安心感と
疲れて帰っても洗濯された服があったり
たとえ寝ててもAの寝顔を見るだけで満たされた気持ちになる。

とにかく幸せだった。



そしてAといると笑いが絶えない。



Aがお休みの日に

「…おかえりなさいっ」

帰るとAがいつもと表情が違って
どこか複雑そう。



「どしたの？」

「どうもしないよ？」

「…そう？」



違和感を感じながら
いつものようにただいまのハグをする。



柔らかいAが着てるニットとAの体温に
ものすごく癒されてたんだけど

「…やっぱ無理っ！」

言って俺から離れるA。



「どしたの？」

悲しいより何よりリアクションにびっくりして聞くと

「太輔が好きっていうからしてみたけどチクチクするっ」

着ているニットをパタパタしだす。



ん？

チクチク？



Aに近づいて
ニットの裾から手を入れるとAの肌がある。



「素肌にニット、私には無理だった」

泣きそうな顔で真剣な口調で言うA。



確かにいつか言ったことがある。



「あはははは、ありがと」

俺のためにしてくれたんだ。

「もうっ！そんなに笑わなくても！」

Aはむくれてるけど。
挑戦してくれようとしたことが可愛くて仕方ない。



そしてAは電池切れするとどこででも寝る。



水族館で寝たことがあったから分かってたけど
トイレやお風呂でも寝る。

お風呂は一緒に入ってる時はまだいいけど1人の時は本当に心配。



ある日一緒にご飯を食べていて

「この芸人さん面白いよね」

Aが言う。



テレビを見ると俺が知らない芸人さんだったから

「へー、面白いネタとかあるの？」

テレビを見たまま聞いても返事がなくて。



「A？」

振り返るとお箸を持ったまま寝てる。



え？
この一瞬で？


子供とか食べながら寝ちゃうとかよくあるけど
大人では見ないから
なかなかの衝撃だった。

しかもものすごく可愛い寝顔で。

思わず笑っちゃうとその笑い声でAが起きる。



「え！ごめん！寝てた？私」

「うん、ガッツリね」



Aの素のリアクションに笑いが止まらない。



「引いてない？大丈夫？」

「大丈夫だよ」



Aにとって俺の家が
寝ちゃうような場所になれたなら嬉しいかな。

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