サイボーグな彼女 12

好きすぎるから 17 ki ページ20

「甘いですよ」

Aがものすごく低い声で冷たく言い放つ。



「なにがだよ」

せっかく一緒に出掛けられると思ったのに。
そんな言い方なくね？



「年末年始にプライベートで藤ヶ谷さんたちがフランスに行っただけでSNSで話題になるんですよ？」

「…そうだけど」

「台湾なんてさらに話題になるに決まってます」



淡々と言うAはやっぱりつれない。



「ちぇーーーーっ」



つまんねーの。

つーか相変わらず冷たいなAは。



むくれてると

「…でも」

さらに小さい声でAが続ける。

「考えてくれてありがと」

少しオフなA。



やっぱり前までと違うな、A。
ちゃんと思ってることを言ってくれてる。



「……おぅ」



ニヤけそうになってると炭谷さんがやって来る。

「飛行機禁煙ですし、行きませんか？」

チラッとタバコを見せてくる。

「はい」

返事をするとAが既にカバンからタバコを出しておいてくれてる。



「ん、さんきゅ」

「行ってらっしゃいませ」



さっきの照れ隠しかタブレットを見ていてこちらを見ない。



やっぱりニヤニヤしそうになりつつ
炭谷さんもいるし顔を切り替える。



「ハードですよね、今日から」

「ですね」

「帰ったら明後日から舞台挨拶ですもんね」

「猫スーツ久しぶりで嬉しいっスけど」



炭谷さんとはとにかく無難な会話。



しばらくただ雑談をしてたら

「…本当に北山さん変わりましたよね」

ふと炭谷さんがしみじみ言う。



「え？」

「前より表情が全然柔らかい」

「…ですか？」

「えぇ。…Aちゃんと一緒」



炭谷さんは少し寂しそーに微笑む。



「俺じゃAちゃんを今みたいな顔をさせてあげられなかったから」

「や、別に俺は…」



そこまで影響与えてなんかないと思うぞ？



「そうなんだけどね。あの子は自分で答え出す子だから北山さんがどうこうとかないだろうけど」

「…あ、そーっスか」



俺もAのこと分かってますけど？的な言い方の炭谷さんに少しムッとする。



「俺、7月に異動なんです」

「へ？」

「香港に」

「香港！？」



また遠いな。



「もういい歳だし身辺整理しろってことで早めに言われてるんですけど」

「へー…」

「Aちゃん連れて行きたかったな」

チラッと俺を見る炭谷さん。



「絶対ダメっす。キスマイが困るんで」

俺だけじゃねーし。



「…分かってますよ」

分かりたくないって顔をして炭谷さんが微笑んだ。

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