すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 9 ページ12

本当に他愛もない話を
ずっとしていた。

好きな食べ物の話とか
学生の時の思い出とか。

大した共通点もなかったけど
嫌な感じも全くなくて。

お互いずっと話していられた。



いよいよ外は明るくなってきて
さすがに喋り疲れてきた頃。



「ねぇ、Aはいま恋してる？」

なんて玉森くんが言い出す。



そんなもの

「してないよ」

「即答かい」

間髪入れずに答える私に玉森くんが笑う。



「玉森くんはしてるの？」

そう聞くと

「うん」

間髪入れずに玉森くんが答えるから

「即答かい」

玉森くんの真似をして答えると玉森くんが笑う。



「どんな人なの？」

興味があるな。

玉森くんってどんな人が好きなんだろう。



「優しくて、いつもニコニコしてて、絶対俺を否定しなくて、困ってると助けてくれるんだ」

「へぇー」



…例えばこれがドラマなら。

こんな帰れない状況で誘われて泊まったタイミングで恋バナしてて
「それがお前だよ」的な展開ってよくあるけど。

玉森くんは私に言いながら目線が遠すぎて
勘違いしようがないくらい私じゃないのは分かる。



「その人に好きって言わないの？」

「…言わない。ううん、言えないんだ」

「なんで？」

「絶対に結ばれない相手だから」



そう言う玉森くんがあまりに切なそうな顔をしていて何だかこっちまで辛くなってくる。



「そんなのわかんないじゃん」

「分かるよ、ダメなんだ」

「なんで？…って聞いてもいいの？」



恋愛なんて自由なんだからいいじゃん。
どうしてそんなにダメって決めつけるんだろう？

たくさん話したから調子に乗ってつい突っ込んで聞いちゃった。



でも言いたくないこともあるよね。
良くなかったかな。



私の質問に考えこんで黙っていた玉森くんは少しすると

「Aになら言ってもいい気がするけど…もう少し時間ちょーだい」

そう言うとふにゃって笑う。



けどその笑顔がやっぱりどこか辛そうに見える。



でも

「うん、わかった」

とだけ言った。
言いたくないならあまり踏み込まない方がいいだろうし。

でもいつか教えてくれるんだ。
ならそれまで待つ方がいいよね。



「…なんかAって落ち着く。つかず離れずでいい距離感だからやっぱり話しやすい」

「そう？」



どこがだろう。



その会話を最後に色々考えてたら
お互いいつの間にか寝ちゃってて。

喋り疲れたのか気づいたら昼過ぎまで寝てて。


玉森くんが送ってくれるついでにお昼を食べて解散した。

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