すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 25 ページ28

宮田くんを失った玉森くんは
表向きはキチンと仕事をして見えたけど
研修準備に資料が足りないとか数字が少し違うとか
小さなミスが増える。

「ごめん」

そう言う玉森くんは本当に心ここに在らずで
食欲も無くなっていたから
ほぼ毎日ご飯を作りに通っていた。



そして私にも変化がある。

宮田くんが居なくなった人事異動が行われた直後
部の先輩にオメデタが発覚した。

「もう人数がどこもカツカツでさ、今年は移転もあるし経費削減で人増やせないからAに大半引き継ぐから」

課長に言われて引き継ぐ仕事が出来て少しずつ仕事が増えた。



そんな中で
今日は移転プロジェクトの業者さんとの顔合わせの日。

事務用品屋さんの担当さんの顔合わせの中に見知った顔がいる。



「え！先輩！？」

「あー！Aじゃん！」



事前にもらってた資料の中に名前には
見知った名前なかったのに。

その人は私の同級生のお兄さんで
私の兄が先輩と仲が良くてたまに先輩がうちに遊びに来てたから顔見知りではあった。

この先輩の兄弟の人気と来たらそれはもう学校でファンクラブが出来る勢いで凄くて。

よくラブレターやらプレゼントの橋渡しを頼まれていた。



「色々あっていま俺の名前『北山宏光』なの」

「へー！」

なんて言いながら名刺を交換する。



「昔みたいに『宏光先輩』って呼んでよ」

「さすがに出来ません、仕事ですから」

「あはは、ツカサ元気？」

「元気ですよ、たまにご飯行きます」

私も兄も家から通勤はキツいからそれぞれ一人暮らししてて
たまにご飯を一緒に食べていた。



「え、今度一緒にメシ食おうぜー！とりあえずこれからヨロシク」

「はい」



なんて盛り上がって名刺交換してるのを
玉森くんはぼんやり眺めていて。



打ち合わせをしてから帰り際に宏光先輩が何かを付箋に書いていて

「これ私用の電話。後でワン切りしといて」

帰る間際に私に渡してきた。



「はい、兄にも連絡しておきます」

「ん！ヨロシク！」

宏光先輩は爽やかに帰っていった。



「…知り合いだったんだな」

玉森くんは宏光先輩を見送った後
打ち合わせ中はしっかりしてたけど
終わった途端目の焦点も合わずフワフワしてる。



「お兄ちゃんの学生時代の友達」

「へー」

返事はあるけど玉森くんは
やっぱりうわの空。




最近打ち合わせ後の会話はあまり成立してないから
いまのこの会話もすぐ忘れそう。



そしてそろそろしっかりしてくれないと困るんだけどな。

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