すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 23 ページ26

それから3年。

その日は
異動の内示が出る日だった。

総務は会社の席を決めたり
名札や名刺の準備があるから
早めに社員の異動部署を知る。

会議室に総務全員呼ばれて資料が配られた。



「これで俺とAもようやく離ればなれかもな」

「これからは研修資料自分で用意してよね」



玉森くんは事務所移転のプロジェクトリーダーに決まってるから異動がない確約がされていた。
私はそのメンバーじゃないからそろそろ異動になってもおかしくなくて。
何となく覚悟をしていた。



「は？どの部署に行っても呼ぶし」

「知らないよ、1人で用意して誤字だらけで出せばいいじゃん」

「そーゆーめんどくせーのヤなんだよ、Aやってよ。経費の処理も」

「…ついでに仕事増やさないでよ」

なんて笑って言いながら資料を見て私は凍りついた。



異動者の名前に私の名前は無かった。



代わりに
宮田くんの名前があった。

しかも新幹線で3時間かかる距離。



玉森くんを見ると青ざめていて。

その状態で打ち合わせが始まる。



少しして課長から

「佐藤さんが異動になるから移転のプロジェクトはAさんに変更で。いいな？A」

「はい」

「玉森もそれでいいな？」

私が返事をしたから課長も玉森くんに振ったけど。



玉森くんは黙ったままで。

周りには玉森くんが考えこんでるように見えてるだろうけど私には玉森くんが上の空なのが分かっている。



「玉森くん？」

声を掛けると

「え！あ、ハイ。Aさんよろしく」

って慌てて返してる。



「玉森もAで不安かもしれないが」

「そうですね」

「…課長も玉森くんも失礼ですね」

課長と玉森くんと私のやり取りにみんなが笑って場が和んでその場は終わるけど。



打ち合わせが終わった途端、玉森くんは泣きそうになってる。

「A」

「うん」

「…今日夜付き合って」

「分かってる」



まだ本人にも言えない。

この話をする話はこの場に居る人しかないわけで。



だから居酒屋で玉森くんは案の定荒れた。

「マジで無理」

「そうだね」

「俺、笑って見送ることができる気がしない」

そう言ってテーブルに突っ伏した玉森くん。



「でもさ、宮田くんにとってはチャンスだよ？係長になるんだしさ」



宮田くんは成績が認められて出世して出向することになった。

「宮田くんと同じ所に異動願い出すとかする？」

「…うん」

突っ伏したまま動かない玉森くん。



この後、完全に潰れてしまった。

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