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特別な日に 9 ページ40

裕太はただ海を眺める私に
ずーっと付き合ってくれた。

波が打ち寄せる海を見たり空を眺めたり。

全然飽きなかった。



気がつくと辺りは暗くなっていて。

空を見上げると星が見える。



「…キレイ」

思わず呟くと

「ん？」

裕太が反応する。



「星が見えるな、って思って」

「あぁ」

そう答えて裕太が私が見てる方を見る。



「星はさすがにうちの実家の方がキレイかなー」

「まぁここは何だかんだ都会からそんな離れてないからねー」

「そうだよね」



でも星を見るとか久しぶりで。



東京に来てから星を見るとかそんな気持ちになったこともなかった。



そもそもこんなに外でぼーっとすることとか
ほとんど無かったよ。

夕日見るとか星を見るとか
とにかく景色見るとか
電車の中から外を見るくらいしかしてなかったし。



たまにはこうして何も考えないで
ぼーっと景色見るのもいいかもしれない。



ふと裕太を見ると
裕太も海を眺めてて。

月明かりと街灯に照らされた横顔がキレイで
思わず見とれちゃう。



「ん？どした？」

私が見てるのに気付いて声を掛けてくる裕太。



「…裕太の顔がキレイだなって思って」

「あはは、ありがと」

正直に言うと
少し赤くなる裕太がちょっと可愛い。



「…たまにはいいね」

裕太が言う。



「何が？」

「こうやって何も考えないで景色をただ眺めてるのって」

そう言って裕太が柔らかく笑ってて。



あ、同じ気持ちになってる。



今まで誰かと同じ気持ちを共有って
あんまりしたことなかったな。

なのに裕太は同じ気持ちになってくれてる。



「……うん」



なんでだろう？

何だか嬉しくて泣きそうになった。



俯いちゃう私に裕太が

「ん？なんかダメだった？」

って心配して覗き込んでくる。



ううん、違うの。
嬉しくて。



そう言いたかったけど胸がいっぱいで声にならなくて。

ただ首を振った。



「…どしたの？」

すごい優しい声でさらに裕太が聞いてくるから
心配させたくなかったくて

「嬉しいの、裕太が同じ気持ちで」

声に出したら
やっぱり涙が零れちゃう。



そんな私に裕太がまた優しく笑って
裕太の長い綺麗な指で私の涙をそっと拭ってくれる。



「俺も嬉しい」

そう言って顔が近づく気配。



気がつくと。



私の唇に裕太の唇が静かに重なっていた。




驚いてるとそっと裕太が離れて

私と目を合わせると

「…目、つぶって」

って言うから目を閉じたら



また唇が重なった。

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