拾ってください。

特別な日に 4 T ページ31

夜中にふと目が覚めて。



Aは夜カーテンを閉めない。
だから夜でも外が明るいなら明るくて。

月明かりを頼りにAの寝顔を見る。



ものすごく無防備な顔だ。



ほっぺに触ってみる。

肌が柔らかくてずっと触っていたい。



どうしよう。

ちゅーしたら怒るかな。



彼氏いた事ないってことは
ファーストキスの可能性高いもんね。



やめとくか。

起きてる時にいつかちゃんとキスしよっ。



そう決めて抱き締めると

「んーーー」

口元をむにゃむにゃさせてる。



「起きちゃった？」

声をかけると

「…うみ」

目を閉じたまま返してくるA。



「うみ？」

聞き返す。

「うみ、みたい」

寝ぼけた声でAが言う。



「うみって、海？」

「おっきいやつ」

「…おっきい？」

「きれいなやつー、日が沈んで、月がきれいでー…」



またすーーって寝息を立てる。



ん？
夕方から夜の海を見たいってことかな。



へー。そーなんだ。
叶えてあげたいな。



舞台落ち着いたら
叶えてあげてもいいかな。



なんて思いながら寝ちゃう。



気がついたら昼前で。

そろそろ帰らないといけないからAを起こすと
めちゃくちゃ不機嫌。



なんだかブツブツ言いながら何かを作ってる。



「はい」



しばらくして出てきたのはチーズがかかったトースト。

でもチラチラ見えてるのが…



「納豆？」

「そう」



そう答えてAは納豆のトーストをかじってる。



「なんでも文句言わないって言ったもんねっ」



言いながらコーヒーを啜ってるA。



……えーー？

美味しいの？



半信半疑でかじる。



…………んっ？



「…あれっ？」

「え？」



気のせい？

って思いながらもう一口かじる。



「………うまっ」

なにこれめちゃくちゃ美味しい。



「ホントっ！？」



俺のリアクションに顔を輝かせるA。



「良かったー！美味しいって言っても誰も信じてくれなくて。もしかして私の味覚おかしいのかなって思ってた！」

なんて言ってAはニコニコしてる。



「美味しいよ。おかわりしたい」

「そんなに？ありがとう！」



さっきまであんなに怒ってたし不機嫌だったのに。



「これ上にかかってるのチーズだけ？」

「マヨネーズもかかってるよ。七味掛けても美味しいのっ」

ってAはものすごい嬉しそうに笑ってる。



「もう1枚焼くねっ」

「うん」



裏表のないAが本当に可愛くて。

またキミに夢中になる。

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