サイボーグな彼女 9

はじめての。1 ページ39

冬のライブも無事終わって
いよいよクリスマス前。



「分かってるよな？」



直近のスケジュールの確認をしながら現場に向かってると
北山さんがニヤニヤしながら言う。



「何がですか？」

「クリスマス」

聞き返すと言う北山さんに少しドキッとする。



「ラジオ終わった後泊まりだからな？」

「そうでしたっけ？」

「遮光カーテンの威力を発揮する時が来てるだろーが」

「…そうですよね」



あぁ、言いにくい。



「プレゼント交換もあるもんなー？」

ニヤニヤしながら北山さんが言うけど。




店員さんに確認して
絶対にペアにならない柄を選んでるんです。



「どんなのかなー？」

北山さんはものすごくニヤニヤしてる。



…ダメだ。

楽しみにしてるよね。



「あの」

「ん？」

「……夕飯何がいいですか？」

満面の笑顔を浮かべてる北山さんに
ペアにならないものを選びました、なんて言えなくて。

「たこ焼きと唐揚げーっ」

無邪気に答えてる北山さんにとてもじゃないけど言えなくなった。



「もうAは買ったんだろ？」

「え？」

「藤ヶ谷と居た店ってその店だろ？」

……そうなんですけど。



「俺、聞いちゃいけねーこと聞いた？」

「いえ違います！えっと…」

なんて話してたら社用スマホに着信。



『宣伝 炭谷』



スマホが北山さんに見える位置だったから
北山さんが嫌な顔をする。



「出んの？」

「後で折り返します。運転中ですし」

「…ふぅーん」

気にしてませんよ、って顔で答えてる北山さん。



「なんの用なの？」

でも結局北山さんは聞いてくる。

「多分雑誌の案が出来たとかそういうのじゃないかなと思いますけど」

「ふぅーん」



鳴り終えて真っ暗になるスマホの液晶。



信号待ちでアイドリングストップした時に私のカバンからスマホのバイブ音。

「……なぁ」

「はい？」

「カバン、見ていい？」

「え？」

北山さんは私が返事する前にカバンからスマホを出して見る。

「…こっちも炭谷さんだけど」

『炭谷 涼』って表示されたスマホの画面を私に見せてくる。



「私用にまで掛けてくるの？炭谷さん」

「…たまに」

北山さんが聞くから正直に答える。
しかも私用に掛けてくる時はたいてい何かに誘われる事が多い。




「炭谷さんに言ってよ『彼氏出来た』って」

「え！？」



彼氏ですか？



「…嫌なの？」

ものすごく不満そうに唇を尖らせて私を見てる北山さんが
失礼だけど何だかとても可愛く見える。

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