すぐ近くにいる another story

お隣りさん S -side you- 1 ページ34

半年前。



出張を予定より早く終えて帰った私を待っていたのは
真っ裸の彼と
真っ裸の会社の同僚。

慌ててる彼に対して
どこか勝ち誇ってた顔をしていた同僚はこうなることを望んでたんだと思う。



彼はいい企業に勤めてたし
優しいしいい車にも乗ってたから
世間で言えば『旦那さんにしたら幸せになれるタイプ』だっただろう。

同僚と他の同僚やその彼氏たちと飲んだり
BBQをしたこともあったから
連絡先の交換なんて私がトイレ行ったタイミングでいくらでも出来ただろうね。

ただ連絡なら私を通せばいいのに
同僚に教えてる地点で私からしたら彼は無い。
その地点でアウトだ。



仕事は楽しかったけど
彼氏や持ってるカバンのブランドや着てる服のセンスで
女同士のマウンティングが繰り返される職場にうんざりしてた。



これを機に辞めよう。



そう思ってから色々なことが楽しくて仕方なかった。



彼氏の弁明を聞くことなく着拒して
2人で住んでいた家に彼がいない間に入って
必要最低限のものだけ持って
「残りは処分して下さい。今までありがとう。さようなら。」
とだけ置き手紙を残す。

部屋を出た私は
その足でマンスリーを契約すると
次の日には会社に辞表を出した。

引き継ぎ期間中
同僚が言いふらしたのか
私が彼を取られて逃げたって言う人もいたけど
それで構わなかった。

職場から解放される喜びが勝ってたし。


辞めた会社から離れた雑貨屋に勤め先を決めると
会社には実家の連絡先を登録して
行先は親と地元の友達にだけ伝えた。



部屋を契約して引っ越すと
角部屋だったのでお隣は1人で
爽やかな男の子だった。

「どうも、千賀って言います」

そういう彼は本当は優しそうで
少し…いや私にとってはだいぶイケメン。



…でももう恋とかしたくないし。



なのに。

スーパーで偶然会っちゃって。

食材を半分こし合う仲になる。



買い物も楽しいし話も楽しい。

ものすごく食べ物の趣味も合う。
なんなら元カレと過ごすより楽しかった。



ある時待ち合わせした時に
仕事が長引いたって走ってきてくれた時は
本当に嬉しくて。

嬉しくて笑っちゃいそうになるのを
堪えるのに必死だった。



その日

「あのさ、今度メシでも行かない？」

そう言われた時本当はものすごく嬉しかったのに
また終わりが来るんじゃないかと思ったら怖くなって。



変な顔しかできなくて。



すごく行きたいのに
終わりが怖いとか。



多分この時から健永が気になってた。

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