次に繋げて ページ43
真上を貨物電車が通る音がして、
普通の電車が動いてることに気づいた。
「あれ？Aちゃん新幹線じゃないよね？」
「うん、東海道線っていう普通の電車。3駅なんだけど、山手線の3駅とは訳が違うレベルの遠さで、川と山越えるから」
はにかんで笑う。
てことは、もしかして…
「電車、もう動いてるんじゃないの？」
ハッとする彼女。
バレた、って顔をしてから、俯いた。
そして、消えそうな声で言う。
「…お見送りしたくて」
ヤバい。
嬉しい。
にやけそうになる。
でも、最後だからって彼女が思ってるとしたら、
っていうのが頭から離れなくて
次に繋がるなにかを探すのに必死になっている俺。
嬉しい、も
ありがとう、も
言えなかった。
そういえば、疑問だったことがある。
「静岡ってさー、電車1本しか通ってないじゃん」
「あー、東西にしかないね」
「他のとこ行きたい場合どうするの？」
「バスかクルマだね。静岡住んでたら免許は必須だよ」
石垣いちご食べたいなー、と思って調べたら
行く手段がバスかタクシーってなってたので気づいた。
やっぱメインは車なんだ。
「へー、Aちゃんも持ってるの？」
「そりゃもちろん！小さいけどクルマも持ってるよ」
「え、じゃあ石垣いちごも狩りに行けるの？」
「高いから1回しか行ったことないけど、夢のようにイチゴ食べれるよ」
夢のようにイチゴ…
あのパフェのイチゴ…
やっぱ行ってみたいな。
「めちゃくちゃ行きたいんだけど！！」
「いや、春しか出来ないよ？」
春しか。
これだ、次に繋げるもの！
「春！！！絶対行こう！！！！！」
コレだ！！！！！
これなら春まで繋がる！！！！
…半年以上先だけど。
でも繋がるものがあれば、とりあえず今日で終わりっていうAちゃんを繋ぎ止めることが出来る。
「…私の車、ホント小さいしスモーク貼ってないよ？」
不安そうに言うAちゃん。
「大丈夫っしょ、車の中なんて見なくない？まあ、さすがに帽子とサングラスはした方がいいかもだけど」
「クルマ、キスマイのツムツム乗ってるよ」
「マジで！嬉しいんだけど」
「藤北で乗せてる」
やっぱ需要あんのな、藤北。
「そこにリアル藤ヶ谷乗るって面白いな」
「緊張しかないよ、絶対に事故れない」
「え？そんなにぶつけるの？」
「自慢じゃないけどゴールドです」
「じゃあ大丈夫っしょ。なんなら俺運転しよーか？」
「あはは、頼むかも」
笑う彼女。
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作者名：shizu
| 作成日時：2018年10月5日 4時
