〜16💌〜 ページ16
それから特に進展のないまま、俺達は３年生になり、
受験を乗り越えて、卒業式はあっという間にやってきた。
「真緒〜！ボタン頂戴！」
「私にも〜！！」
「ちょ、待て待て、もぎ取ろうとするな！」
卒業式が終わり、
皆外で写真を撮ったり、がやがやしているとき
何故か俺の周りには女子の群れ。
狙いは第２ボタンらしいけど、
割と周りの同級生はあげてるっぽい？
俺のなんて誰にも需要ないだろ、
と心のなかでツッコミながらも、
意外と俺って人気だったのかな？なんて考えては首を振る。
…取られる前に俺が
誰かにあげればいいんだろうけど。
「真緒…！」
まだ交際中の彼女が、
期待しているような目を向けた。
…渡したい人、
考えたら考えるほどアイツが思い浮かぶ。
その時点で、俺って結構最低な奴だ。
まだ恋人がいるのに。
別の女の子のことしか考えられない。
どこの高校に行くんだろ。
それはわからないけど、絶対に違うってことは知ってる。
もう会えないかもしれない。
たった３年間で、
１日のうちにアイツと話せたのは
部活の始まる前、数分だけだった。
あっちからしたら、
ちっぽけな思い出に過ぎないかもしれないけど。
俺は違う。
だから…
「ごめん、俺、
渡したい人いる。」
校門に向かって友達と帰っていたアイツ。
人目なんて気にせずに、
ただ、このまま終わりたくなくて。
「A！！」
こんな声、部活でも出したことなかったな。
俺の声に気がついたのか、
こちらを振り返るA。
そばに駆け寄ると、
彼女も友人から離れて俺のところに来てくれた。
「衣更くん、どうしたの？」
久しぶりだね、卒業おめでとう、なんて付け足して、
いつもの笑顔を見せた。
…あぁ、
この気持ち、
やっぱそうなんだ。
「…これ、もらってくれないか？」
学ランから思いきりボタンをちぎり取り、
彼女に手渡す。
「…ボタン？」
彼女は俺の胸元を見つめ、
驚いたような顔をした。
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