15 兄なんて ページ17
口の端を吊り上げる彼と目線を交わしたままでいたAだったが、視線を逸らし再び大きな溜息をついた。
『…いつから?』
「まず、君が特定の誰かに声をかけるのも珍しい事に加えて、何かと理由を付けて彼から離れようとしない。この二つだけで君、もしくはマフィアに目をつけられている事が分かったよ。
二つ目に、虎探しと云った時の君の目だ。微かだが歪んだね。焦ったのかい?我々に先に手を伸ばされては、あのマフィアでも容易には手を出せなくなるからね。まぁ、それもあって、敦君が虎なのではないか?という疑惑が私の中で浮上したのだけどね。確信に変わったのは、さっき彼に言った通りだよ。故に私は、君がマフィアとして敦君を狙っていると知ったわけさ」
『一つ、反論いい?』
「構わないさ」
『…私だって、特定の誰かに声くらいかけるけど。貴方の中の私の認識、変えてもらえる?』
思わぬ反論に、太宰は少々驚いた顔をする。
すると、ふふふと笑いだし「それは失礼」とどこか嬉しそうに謝罪する。
だが、それ以外の事に反論しない彼女を見て、太宰は再び彼女の瞳を捉えようとじっと見つめる。
「それ以外は何も云わないのだね」
『…貴方がそこまで考えていたのなら、私からは何もないね。…というわけで、この手どけてくれる?』
太宰の手を、Aが自身の手でペチペチと叩く。
その光景を見た太宰は、どこか遠く切ない瞳を彼女に向ける。
「…A、君はもう私の事を兄とは呼んでくれないのだね」
『当たり前。』
「四年前のこと、まだ怒ってるのかい?」
『それも当たり前。…私はあの日、貴方が帰ってくるのをずっと待ってた。…なのに、帰ってくることは無かった。家具しかない、広いだけが取り柄のあのマンションで、ずぅっと馬鹿みたいに玄関を眺めてた。
貴方の「絶対に帰ってくるから」の言葉を信じてずっと待ってたのに。夕飯も二人分用意して、いつでも食べられるようにしてたのに…結局、玄関が開いて帰ってきたと喜ンだら、三日も音信不通だった私を心配してボスが息を切らしてやってきただけだった。』
『…Aっ!何してるんだい!?玄関で…太宰君を待っていたのか…』
『…兄さん帰ってこないの…絶対に帰ってくるって言ったのに…』
『とにかく寝なさい。酷いクマだ…』
『やだっ!!寝てる間に兄さんが帰ってきたら』
「ボスから知らされた、貴方がマフィアを抜けたという事実を知った時の私の心境、考えた事も無いでしょう?」
120人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マナ(プロフ) - とても面白かったです!!続きがすごく気になる…頑張ってください!応援してます!! (2020年8月25日 19時) (レス) id: da5e25c6ab (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - かりんとうさん» こんにちは。楽しみにして頂いてありがとうございます...ただ、中々更新出来ず申し訳ないです(汗) (2019年5月21日 8時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - こんばんは、とても面白くてこの先に広がるこの作品をとても楽しみにしています!これからも頑張ってください!!! (2019年5月7日 21時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 音奏さん» その様に言って頂きとても嬉しいです(^-^) 更新頑張ります。 (2019年5月1日 20時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
音奏 - このような、素晴らしい作品を作れるなんてとても凄いです。続き、楽しみにしています。 (2019年5月1日 16時) (レス) id: 0e776977f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朧月 | 作者ホームページ:http://fblg.jp/510814/
作成日時:2019年4月29日 17時