綾辻行人の助手2 (ページ8)

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綾辻行人の助手、時々短編集。バレンタインデーページ8

あ「…」

坂「お湯は入れてはいけませんからね？」

あれから色々とあって安吾に教えてもらってる。
まぁ…ざっくり説明すると、安吾から辻村さんに綾辻先生への依頼。
↓
『行かないといけないので、綾辻先生が居ない間に作って下さい！』と云われた。
↓
併し作り方判らず。
↓
辻村さんが安吾に頼み込んで作り方を教えてもらうことになった。
↓
本当に事務所に安吾が来た。

あ「…辻村さん強い」

坂「何か云いました？」

あ「チョコって作るの難しいですね」

今はチョコを入れたボール(小)をお湯の入ったボール(大)に入れてチョコを溶かしている。
小学校の卒業式で遣った事あるが、矢張り難しい。
序でにその時は体調不調を訴えサボった。

坂「…可愛い…ですね」

あ「はい？」

坂「…可愛いチョコが出来ると良いですね」

あ「大丈夫です、溶かす前は義理チョコなので溶かした後も同じでしょう」

何とも云えない顔された。
まあ気にせず、チョコを溶かしていると塊は消えている。
此処から何すれば…。

坂「お弁当に入れる銀紙、在りましたよね」

あ「はい」

坂「それに入れて冷やすだけですよ」

「この銀紙はそれようか」と納得した。
辻村さんがやけに銀紙に拘っていたのだ。
流石辻村さん。

あ「…思ったんですが」

坂「何です？」

作業している途中で気になることがあったので聞いてみる。
先程から如何しようもなく気になる疑問。

あ「義理チョコを溶かして別の形に作り直す…変わらなくないですか？」

坂「…詰まり？」

あ「…幾ら溶かそうとも形を変えても、義理は義理では？」

坂「先程も無視しましたが、それは云ってはいけません」

夢を壊すという奴か。
チョコを冷蔵庫に入れ、その日は終わった。

二月十四日、バレンタインデー。
辻村さんに朝っぱらから電話で起こされ、綾辻先生よりも先に起きた。
チョコを確認してみるとちゃんと固まっている。
__当たり前か。
それをハート型の箱に入れてリボンを付けた。

綾「…ん？早いな、お早う」

あ「お早う御座います。それから」

私は何故か早くなる鼓動を無視してこう云った。

あ「バレンタインデー…」

綾辻先生はハート型の箱を見ると目を見開いた。
そして一気に赤面。

綾「…昨日、俺の態度は判り易かったのか？」

ゆっくりと此方に向かってくる。
落ち着こうとゆっくり歩いているようだ。
私は其れに妙に意識してしまう。

あ「…あ、あの…」

綾「好きだ」

すっと頬を撫でられるとキスされた。