40話 ページ11
「私と同じ時代に生まれたのが、お前の失敗だ」
此処でも聞こえるくらいの声が聞こえた。
__辻村さんの声だろう。
あ「…恥ずかしくないのかな」
綾「さて、如何だろうな」
__後で恥ずかしくなるんだろうな。
そう思い乍ら菓子の皿と茶を片付ける。
その数秒後、案の定辻村さんが来た。
綾「…やあ、辻村君。お早う」
綾辻先生は安楽椅子に揺られ、本を片手に煙管を吸い乍らそう云った。
辻村さんは何時もより硬い声で「綾辻先生」と云う。
__見えないが表情も硬いのだろう。
辻「何が『お早う』ですか。まず私に云うべきことがあるでしょう」
綾「…ほう、そうなのか」
綾辻先生は本のページを捲り、そう云った。
__完全に聞く耳無しのようだ。
そして辻村さんが本をひったくる音が聞こえた。
辻「人と話す時くらい本を読むのをやめて下さい、私は貴方の監視役なんです。貴方の対応次第で、私は何時でも貴方を射殺出来る権限があるんです。云ってる意味が判りますか?」
綾「成る程。非常に効果的な脅しだ…ではこうしよう。俺はこれから君に敬意を払って接しる。その代わり、君は今から俺に珈琲を淹れてくれ」
__違う、全く敬意を払おうとしてない。
__声からそれが判るんだ!
__気付いて、辻村さん!
そんな事を思い乍ら辻村さんの返事を待った。
辻「なんだ、そんなことですか。いいですよ、そのくらい」
あ「…くっ…!」
やめてくれ、私を笑わせないでくれ。
声を抑えるのに必死なんだ!
綾「黒砂糖二つ、ミルクは無しだ」
辻「判りました」
そう云って私の居る方(台所)に行く辻村さん。
腹を抱えて蹲る私を見ると大慌てしだした。
辻「だ、大丈夫ですか!?お腹痛いんですか!病院に連絡を!」
あ「…くっ…い、いえ…綾辻先生に珈琲作ってあげて下さい」
辻「あ、はい」
私はもう無理だと思い、台所から離脱した。
綾辻先生の近くの椅子に座り、笑い疲れて溜息をする。
綾「…楽しそうだな」
あ「…ええ、辻村さんが可哀想とは思いましたが」
互いに微笑み、一息付いた処で辻村さんがこう云った。
辻「私はメイドではありません!」
綾「気付くのが遅過ぎる」
綾辻先生は先程まで微笑んでいたとは思えない声でそう云った。
__何故私だけに微笑むのだか。
まあ…嬉しい事なのだが。
あ「…まぁ、辻村さんの淹れた珈琲は美味しいので淹れさせたくなる気持ちは判ります」
辻「ほ、本当ですか?」
綾「…秋夢の方が旨い」
私のフォローが無駄に終わった…。
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みすゞ - すごくかっこいいです…。これからも応援してます! (2021年12月19日 23時) (レス) @page16 id: a79f0b541b (このIDを非表示/違反報告)
文ストは神 - 面白いです!更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2021年7月23日 17時) (レス) id: 83c4af30f1 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ味の白兎 - 頑張って下さい!応援しています! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 8cc010c4ca (このIDを非表示/違反報告)
天野紗綾 - 更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2018年1月17日 23時) (レス) id: 17282353fe (このIDを非表示/違反報告)
曇天に笑う - 更新して欲しいです! (2017年11月29日 8時) (レス) id: 9a5180e9be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜木 華奈 | 作成日時:2017年1月9日 22時